1. HOME
  2. 物流業界ニュース
  3. 2009年4月
  4. 【特別インタビュー】これからの鉄道貨物輸送を国交省に聞く

物流業界ニュース

特別インタビュー これからの鉄道貨物輸送を国交省に聞く

国土交通省 鉄道局長 北村隆志氏

今は不景気でも環境問題もあり鉄道への期待はさらに高まる

鉄道貨物輸送のグランドデザイン≠ツくり未来像の提示も

昨年秋以来の経済の急激な落ち込みは、これまでの産業構造を大きく塗り替えそうな激変ぶりを見せている。物流分野でも例外ではなく、生産・販売量の劇的な減少で輸送需要は大きく落ち込んでいる。その一方で、地球温暖化など環境対策はより厳しさを増しポスト京都議定書計画ではCO2の半減も言われるまでになった。そうした中、環境にやさしく、効率的な輸送手段として改めて鉄道貨物輸送への期待が高まっている。これからの鉄道貨物輸送はどう発展していくのか、国土交通省の北村隆志鉄道局長にこれからの方向を聞いた。

― 今回の急激な景気減速や高速道路料金の大幅引き下げなどを背景に、いわゆる逆モーダルシフト′サ象も言われていますが、国内貨物輸送の物流体系をどのようにみていますか。

北村 現在、トラック輸送が営業用トラックと自家用トラック合わせてトンキロベースで国内貨物輸送の6割を占めトラック中心の物流体系になっているのは現実です。これは、やはり、トラック輸送がドア・ツー・ドアのサービスで優れており、これが荷主に選択された結果です。ただ、これからさらに厳しい対応が迫られてくる地球温暖化など環境問題などを考えると、今後、環境負荷が小さく効率的な鉄道貨物輸送に改めて期待が高まると思います。

― 京都議定書のあとの計画、ポスト京都議定書がいわれています。

北村 営業用トラック輸送の単位当たりのCO2排出量は、鉄道貨物輸送に比べ約7倍、鉄道輸送はトラック輸送の7分の1のCO2排出で済む。また、1人の運転士がトラック65台分を引っ張って走れる。効率性でも有効な輸送手段です。現在の京都議定書でわが国が国際的に約束しているのは90年比マイナス6%で、わが国のCO2排出量の約2割が運輸部門からの排出です。この国際公約を実現するため現在、物流分野でもモーダルシフトの推進、輸送の共同化、燃費の改善など各種の効率化施策を通じてその達成に向けた取り組みを行っているところですが、ポスト京都議定書では、マイナス6%という目標を、さらに進めてCO2の排出量を半減せよという議論も行われるようになりました。

― こうした中で、モーダルシフトの受け皿としての鉄道貨物輸送への期待は高まると…。

北村 わが国のCO2排出量の2割が運輸部門が占めていますが、その9割はマイカーなど自動車からの排出が占めています。これまでにも、燃費の改善など単体車の改良なども進んでいます。そうした中にあって、効率化が即、環境対策に直結する物流分野のさらなる対策が期待されています。荷主に対する省エネ規制などもあり、貨物鉄道などへのモーダルシフトに対する期待はさらに高まってくると思います。現在のJR貨物の営業キロは8346キロですが、その殆んどは旅客会社のレールを借りて貨物列車を運行するという国鉄改革で取り決められた制約の上で成り立っているのは確かです。その制約の中で、貨物鉄道会社は、トヨタ号や利用運送業界と連携したコンテナのシャトル列車の運行など輸送力の拡大に向けたいろいろな努力をされています。その基本はいかに荷主のニーズに応える物流サービスを行うかです。JR貨物では今、ソリューションチームを置いていかに荷主のニーズを取り込んだサービスを行うか、その具体化に取り組んでおられるが、こうした取り組みは大変大切なことです。やはり、物流業界の一員として、単なる運び屋≠ナはなく鉄道貨物輸送を核とする運送事業者、物流サービス事業者として事業経営を行っていかなくてはいけないと思います。

◆JR貨物の経営支援へ無利子貸付を5年延長

― JR貨物は全国をネットした唯一の鉄道会社ですが、やはり国の支援も必要では…。

北村 国土交通省としても制約された輸送力をいかに増やすかということで、これまでにも東海道線を皮切りに、山陽線、そして北部九州地区と十数年にわたって輸送力増強の工事などインフラ増強支援を行っています。しかし、インフラは改善されても、これだけではいけません。機関車や貨車はまだ古いものが数多く残っています。機関車は約800両のうち性能のいい機関車に切り替えられたのは3分の1程度です。JR貨物でも高性能の機関車への代替を進められており、これまでにも補助金や優遇税制などで支援してきましたが、景気の急激な悪化もあって経営が大変厳しい状況にあるは確かです。このため、無利子貸付を今年3月から5年間、延長することにしました。総額約300億円の資金を無利子貸付するものです。

― ところで、今後の貨物鉄道による輸送をどのように見ていますか。

北村 ポスト京都議定書などを考えると鉄道貨物輸送への期待はますます高まります。やはり、鉄道貨物について何をなすべきかを考える必要があると思っています。鉄道貨物輸送のトンキロシェアは物流全体でみると約4%です。しかし、特性が発揮される1000キロ以上の陸上貨物輸送では34%を占めています。ただ、貨物量の一番多い東海道、山陽線など500キロから1000キロでは7%にとどまっています。やはり、東海道線の物流をどうするのかを考えなくてはならないと思います。ハイウェイ・トレインなどの構想も一部で検討されているようですが、それはさておき、モーダルシフトをどのように位置づけるかを含め、鉄道貨物輸送についてのグランドデザインを勉強してみたいと思っています。

今は、景気の急減速で、JRコンテナの輸送量も1月が14%減、2月は23%減と激減するなど、鉄道だけでなく、全体の輸送需要が落ち込んでいます。

◆高速道料金引下げが逆モーダルシフト¥葡キとは思わない

― 鉄道貨物輸送量の減少は、高速道路料金の大幅値下げの影響もありますか。

北村 一般に言われる休日の1000円乗り放題≠ヘ主にマイカーを対象としたもので、物流分野への影響は昨年10月からの深夜5割引きが影響しているかどうかだと思います。これに、景気の減速で物流需要が大幅に落ち込んでおり、正直、高速道路の引き下げと景気の減退の影響がどのように絡んでいるのかは、よく解らないところがありますね。トラック事業者のコストのうち、高速道路料金の占める割合は数%、高速道料金が下がったからといってもそんな大きな影響はないとみています。よく言われるように、高速道路料金が下がったから、いわゆる逆モーダルシフト≠ェ進んでいるとは思っていません。

― なるほど。フェリー業界がいうような直接的な影響はないと…。

北村 長距離フェリー業界のような直接的な影響を貨物鉄道はそんなに受けていないだろうと…。

◆鉄道貨物輸送のグランドデザインを

― インフラ整備について伺います。国交省では今、新たな社会資本整備重点計画の策定が進められています。この中で、貨物鉄道インフラの位置づけをどのように考えていますか。

北村 社会資本整備重点計画は、当初は事業量を示すアウトプット方式だったものが、今は、その成果を示すアウトカム方式で目標を示す方向に変わってきています。それはそれとして、鉄道インフラについてはそもそもこの計画にはなじみにくい性格を持っていると思っています。というのも、この重点計画は、道路、港湾、空港、海岸、都市計画といった個々の中期計画を一本化して作られたものですが、鉄道インフラはこれまでも鉄道事業者が自らレールなどの施設を整備し運営してきており、他のモードとは違った形態で整備されてきました。貨物鉄道のインフラについても同様で、大切なのは、鉄道貨物輸送に求められているインフラとは何なのか、何が必要かということをしっかり考えることだと思います。最近、ニーズの多様化に対応して、例えば、海外から日本に入ってくる背高コンテナを鉄道で運ぶ、シー・アンド・レールシステムが普及するなど新たなシステムの実用化が進んでいます。やはり、こうしたニーズに対応できる貨物鉄道のグランドデザインをつくり、これからどのようにするかを明確に示すことだと思います。

― 貨物鉄道についての将来像を描き、内外に示し具体化していくと…。

北村 今は景気が悪い。その結果というか、制約されているレールにも一時的かもしれませんが輸送力に余力が生じているようです。こんな時だからこそ、次のステップに向けた備えを行う良い機会だと思っています。

― 最後に、JR貨物の事業計画について伺います。経済の低迷を受けて10年ぶりの赤字の計画になっています。どのように見ていますか。

北村 JR貨物が先日発表した来年度の事業計画では、10年ぶりの赤字の経営計画で50億円の赤字となっています。2月のコンテナ輸送が23%減となるなど厳しい経営環境を考慮したもので、この厳しさは当分続くとの見通しによるものと理解しています。厳しい時だからこそ、運輸部門だけではなく会社全体を見直し、コストダウンを徹底するなど業務の効率化を図ってほしいと思います。国交省としても、補助、税制、無利子貸付などを通して支援していきますが、その前に社内での徹底したコストダウンなどを行ってほしいと思っています。

世界のCO2排出量の5%は日本です。そして、日本の2割は運輸部門からの排出が占めています。言い換えると世界全体で排出されるCO2の1%が日本の運輸部門からの排出です。1%が多いか、少ないか、これは韓国一国が排出するCO2の量に匹敵するものです。やはり、運輸部門のCO2削減には努力すべきで、その有力な手段として鉄道へのモーダルシフトを進める必要があると思っています。(3月23日)

カーゴニュース3月31日号

powered by cargo news

富士物流は、物流・倉庫ソリューションの一括アウトソーシング(3PL)を実現します。