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物流業界ニュース(物流/運送情報)

レポート AEO通関業者、申告件数ベースで6割のカバー率

認定後の体制維持に関する課題も浮上

来年秋の輸出入申告官署の自由化の実施まで1年を切った。認定通関業者(AEO通関業者)も自由化の対象に含まれることから、通関業者のAEO取得の機運が高まっている。申告官署の自由化では、AEO通関業者は貨物の蔵置場所にかかわらず全国のどの税関官署にも申告できるようになり、通関営業所の集約などで人員配置を効率化したり、委託先通関業者や申告先税関の集約を希望する輸出入者のニーズに柔軟に対応できるメリットがあり、ビジネス拡大のチャンスとみられている。現在、全国のAEO通関業者は133者11月11日時点)で、輸出入申告件数全体に占めるAEO通関業者による申告のカバー率は約6割。今年6月には、AEO承認要件等の審査要領が改正され、中小も含めてAEO通関業者の取得はさらに拡大すると予測されている。一方で、AEO通関業者による「不適切な輸出入申告」の事例が報告されるなど、認定後の体制維持に関する通関業者の課題も浮上している。

●申告官署の自由化、相談が全国的に殺到

AEO制度は2006年3月の関税法改正により輸出者向けに制度がまず導入され、以降、輸入者・倉庫業者・通関業者・運送業者・製造者と各業種向けの制度が順次スタートし、サプライチェーンを構成するすべての業種が参加できる環境が整った。AEO通関業者制度は08年4月から実施。当初は「制度参加(AEO通関業者の認定取得)のメリットがない」という声が多く、参加者は少数で推移した。

具体的には、AEO通関業者に対する特例措置(特定委託輸出申告制度、特例委託輸入申告制度)を利用できるメリット以上に、AEO取得に必要な組織・体制の整備にかかる負担が大きいと感じる企業が多く、人的資源が限られる中小だけでなく、組織が大きすぎる大手も取得は「様子見」という姿勢がうかがえた。

一転し、12年以降、大手の取得が相次ぎ、14年に申告官署の自由化の議論が本格的に開始され、AEO通関業者も対象になることが分かると、中小、大手含めて取得を目指す企業が急増。現在は「申告官署の自由化が目前に迫り、同制度を利用したいという意向の通関業者からの相談が全国的に殺到している」(税関関係者)という。

●審査要領改正、中小企業も取得しやすく

こうした中、財務省は6月24日付で、AEO通関業者等を対象にAEOの承認要件等の審査要領を改正。AEOの体制整備で「総括管理部門」と「監査部門」の責任者の兼務や、監査、従業員の教育および研修の第3者への依頼を「差支えない」とした。これにより、人的資源の不足から体制整備が難しかった中小企業も取得しやすくなった。

今回の審査要領の改正は、「AEOではコンプライアンスプログラムとセキュリティの要件を満たし、それが実行・維持されることが重要で、取得のために従業員を増やすのが目的でなく、各企業が持つ資源を最大限使って取得することが望ましい」(関税局業務課の後藤学税関考査官)との考え方を“明示”する狙いがある。

「もともとAEOは法人に限定せず、法人以外も想定されている。従業員数が数人規模の企業でも、コンプライアンスプログラムと手順書が整備され、それに基づいて業務が実行され、業務工程の責任の所在が明確になっていることが重要」(同)で、企業規模にかかわらずAEOへの取り組みを“歓迎”する考えだ。

●趣旨を正しく理解し、賛同して参加を

申告官署の自由化でAEOの実質的“メリット”が拡大したことから、“メリット”にひかれて取得を目指す企業も中にはいる。「AEO制度は単なる貿易円滑化策、規制緩和策ではなく、AEOの趣旨を正しく理解し、賛同した上で制度に参加してほしい」(前出の税関関係者)との声も聞かれる。

申告官署の自由化は、輸出者の業界団体から“規制緩和”の要望として出されたものだが、AEO制度そのものは「数多ある輸出入貨物のうち、取り締まりの優先度が低い貨物を確保し、それ以外の貨物に対し税関のリソースを集中投入する」というテロ対策を念頭に置いた“セキュリティ対策”がベースにある。

AEOは「セキュリティとコンプライアンスが確保された事業者」であって、税関の「パートナー企業」という位置付けにあり、AEOの扱う貨物は税関の取り締まりの優先度が相対的に低くなることとなるため、“結果的に”円滑な輸出入が可能になる――というのが基本スキームだ。

税関のセキュリティ対策をいわば代行する「パートナー企業」であるからこそ、「今後、(関税法関連の)制度改正は、信頼できるAEOが対象となることが想定される。申告官署の自由化でAEOのメリットは拡大することとなったが、申告官署の自由化は適正通関を確保しながら貿易円滑化に資するものであって、AEOのメリット拡大策ではない」(後藤氏)と説明する。

●AEOでなくなるとマイナスイメージも

今年6月にはAEO通関業者による不適切な輸出入申告が報じられた。とくに通関業者では、顧客からの無理な要求に対し講じる社内プロセスの確立が課題とされ、「トップが業績に関して暗にプレッシャーをかけていることもある。トップのメッセージの“伝え方”も大事になってくるのでは」(税関関係者)との指摘もある。

AEO通関業者がAEOを自ら返上したり、認定取り消しになった場合は「利用者」である輸出入者に伝わるよう公告がなされるなど、海外にも「AEOのリストから削除されたこと」が発信される。「AEOでなくなる」ことは、「もともとAEOでなかった」会社よりもかえってマイナスのイメージを持たれる可能性もある。

日本通関業連合会(通関連、鈴木宏会長)ではEラーニングによる「AEO制度コース」を開講しているが、「維持のための取り組みに悩んでいる会社が多い」(通関連の篠原勝美総務部長)。AEOを目指す通関業者は、取得のメリットだけでなく、取得後も維持する“覚悟”と維持できなかったときの“リスク”を再認識する必要がありそうだ。

カーゴニュース 11月17日号

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