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物流業界ニュース(物流/運送情報)

レポート「ドライバー不足」時代のトラック業界の安全対策

 健康起因事故防止、若年ドライバーの教育が課題

トラック運送業界では、不断の努力を傾注しながら安全運行の体制充実を図っている。いまや、事業継続の上でも絶対不可欠な要件である安全と環境。全日本トラック協会(星野良三会長)では安全を最重要課題と位置付け、2014年には「トラック事業における総合安全プラン2009」(プラン2009)の見直しを行い、各都道府県の車両ごとの死亡事故件数の目標を定めるなど、各種安全対策に注力している。交通事故死者数の減少では着実に効果を上げているトラック業界だが、深刻化するトラックドライバー不足に伴う高齢ドライバーの増加や長時間労働などを背景に、健康起因事故防止の取り組みがますます重要となっており、また、来年3月からの準中型免許制度導入により若年ドライバーの安全教育も課題とされる。

●トラックの交通事故死者数は大幅な減少傾向

事業用トラックによる交通事故死者数は大幅な減少傾向にあり、1973年以前は年間1000人以上発生していたものが、その後長年にわたって600〜700人前後で推移。さらに、2005年からは右肩下がりで減少し、15年には10年前の約半減に近い件数となった。同じ事業用自動車であるタクシー、バスの交通事故死者数は10年間ほぼ横ばいで、トラックの車両台数がタクシーの約6倍、バスの約12倍であることも考慮すれば、トラックによる死亡事故は相対的に低い。今年も、10月末までの事業用トラックによる死亡事故件数は210件となり、前年比マイナス32人で推移している。「プラン2009」の数値目標「18年までに220人以下」の目標達成に向け、着実な減少を辿っている。

近年の死亡事故減少の要因としては、(1)シートベルトの装着向上(2)エアバッグ等安全装備の普及(3)飲酒運転、危険運転等悪質運転に対する厳罰化(4)大型車へのスピードリミッターの装着義務化(5)ドライブレコーダ、デジタコ等の安全機器の普及(6)省エネ運転の普及(7)被害ブレーキ等ASV(先進安全自動車)の普及(8)Gマーク(安全性優良事業所認定)の普及(9)その他(車体の衝突安全性能向上、道路交通環境の整備、高速道路の整備と利用促進、アルコールチェックの徹底、ベテラン運転手の増加――など多くの対策が効果を上げているとみられる。加えて、トラック業界による各種安全対策の取り組みの推進と安全意識(経営モラル、交通モラル)の向上が大きく寄与したとされる。

●「プラン09」、数値目標のハードルを上げる

トラック業界の安全対策の指針とされるのが「プラン2009」。国の「事業用自動車総合安全プラン」の中間見直しと合わせて、全ト協でも14年に中間見直しを行い、「飲酒運転の根絶・危険ドラッグ等薬物使用による運行の絶無」という“ゼロ目標”を追加した。

目標を達成するため、営業用トラックを第1当事者とする死亡事故件数について、車両1万台あたり「2・0件以下」を各都道府県(車籍別)の共通目標とし、死亡事故率の低い都道府県トラック協会の事故防止対策の水平展開を図っている。

具体的な重点対策として挙げたのが、「安全体質の確立」「コンプライアンスの徹底」「飲酒運転の根絶・危険ドラッグ等薬物使用による運行の絶無」「IT・新技術の活用」「運行の現場を含めた関係者一体となった行動、構造的な課題への対処」「道路交通環境の整備」。このうち、「運行の現場を含めた関係者一体となった行動、構造的な課題への対処」では、プランの取り組み開始後5年間を経て見えてきた、モードごとに多発傾向にある特徴的な事故にターゲットを絞り、運転者・運行管理者等運行の現場関係者とともに一丸となって事故防止に取り組むとともに、運転年数の少ない若年運転者を効果的・効率的に育成・確保することとした。

具体的には、これまで1年単位で集計されていた事故情報を4半期ごとに集計するとともに、車籍別、車両区分別等詳細に交通事故実態を分析・把握し、有効な事故防止対策を確立。事業用トラックの交通事故の半数以上を占める追突事故の防止にターゲットを絞った「トラック追突事故防止マニュアル」、交通事故による致死率が高い人対車両の衝突に着目した「交差点における事故防止マニュアル」を作成し、活用セミナーを開催。社内での安全運転教育の促進と安全意識の向上に役立てられるように、全ト協のホームページに「事故防止特設ページ」を設け、事業者や運転者向けに作成した安全運転教育用教材資料を公開している。

●準中型免許制度導入で研修テキストを販売

今後の重点取り組み課題のひとつが、報告件数が大幅に増えている健康起因事故(運転者の疾病により、事業用自動車の運転を継続できなくなったもの)の防止だ。14年に改訂された「事業用自動車の運転者の健康管理マニュアル」では、定期健康診断による疾病把握の義務に加え、一定の病気等にかかる外見上の前兆や自覚症状等による疾病の把握することが義務付けられ、脳・心臓・消化器系疾患や睡眠障害等の主要疾病に関するスクリーニング検査の受診を推奨。全ト協では「トラック運送事業のための健康起因事故防止マニュアル」を作成し、睡眠時無呼吸症候群(SAS)対策を解説するとともに、スクリーニング検査の助成も行っている。

もうひとつが若年ドライバーの安全教育。17年3月から準中型自動車免許制度が導入され、高校新卒者(18歳)をはじめとした若年ドライバーの雇用拡大が期待されている。一方、国土交通省ではトラックの初任運転者等について、運転者教育の充実を図るため「貨物自動車運送事業者の運転者に対して行う指導及び監督の指針」の一部を改正。一般的な指導・監督の内容が一部追加され、初任運転者に対して15時間以上の指導が義務付けられた。これを受けて全ト協では改正指導・監督指針(告示)に対応した「事業用トラックドライバー研修テキスト」を作成。業界初の体系的なドライバー教育テキストとして来年3月に販売予定で、11月から会員向けに特別割引先行受付を行っている。また、多くの地方トラック協会が、1セット(10分冊)を無償で各会員に配布する計画だ。

全ト協の永嶋功常務は、「プラン2009」の取り組み計画である(1)ASV関連機器及び運行管理・支援機器の普及拡大(2)トラック運転者教育の充実(3)事故分析及び有効な事故防止対策の検討・活用(4)広報・啓発活動等――について、「ハード(hard)、ソフト(soft)、分析(analysis)、PRを軸に展開している。各種マニュアルの作成やセミナー、キャンペーンはマンネリ化を防ぐとともに、いろいろな材料を出し、視点を変えて事故防止意識を高める狙いがある。事故防止には経営層、管理者、ドライバーの三位一体の取り組みが必要」と説明。今後はとくに懸念される、健康起因事故をはじめ、渋滞に伴う追突多重事故、踏切事故など“大参事”につながる重大事故の未然防止に努めていく意向だ。

カーゴニュース 12月20日号

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