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物流業界ニュース(物流/運送情報)

EC拡大が航空貨物市場に影響、LCCのベリー輸送も期待

 JETROがアジアの航空貨物輸送をテーマにセミナー開催

日本貿易振興機構アジア経済研究所(IDE−JETRO)は3日、東京都内で「アジアにおける航空貨物輸送の現状と課題」をテーマにセミナーを開催し、航空貨物業界などから200人以上が参加した。当日はASEANおよびアジア主要国の航空貨物市場の状況が紹介されたほか、アジア地域でハブの整備を進めるインテグレーターの動向についても現状が報告された。プログラムの最後には登壇者らによるパネルディスカッションや質疑応答が行われ、中国を初めとしたEC市場の急激な拡大が航空貨物市場に与える影響やLCC(格安航空会社)および「貨物LCC」の参入など、業界の旬なテーマを取り上げて意見が交換された。

●ASEANで進む航空自由化、EC大手2社の本格参入で航空需要にさらなる期待

講演ではIDE−JETRO新領域研究センター経済統合研究グループ長の梅ア創氏が「ASEANの経済統合と航空自由化」を解説。同地域においては航空自由化がAEC(ASEAN経済共同体)の一環と位置付けられるとともに、域外の中印日韓欧との航空協定締結交渉にも取り組んでいる。経済成長と工業化が進む中、これまでは海上・陸上輸送が中心だった物流だが、生産ネットワークの精緻化やスマートフォンのような製造業品の小型化・高付加価値化などを背景に航空輸送の重要性も高まっているとした。2008〜14年に掛けての輸出入を見てもASEANは世界全体に対して大きな伸びを示しており、とくに中国発ASEAN向けの貿易が急成長していることを示した。

国際航空貨物輸送量(トンキロ)については、シンガポール、マレーシア、タイといった先進諸国では縮小傾向にあるものの、インドネシアやフィリピン、マレーシアといった中進国ではほぼ倍増。その上で、航空自由化に向けてはRIATS協定(航空貨物輸送の完全自由化に関する多国間協定)で以遠権までの自由化を進め、「不完全ではあるが着実に前進している」と梅ア氏は評価する。16〜17年にはRIATS協定の見直しによるさらなる自由化が検討されるほか、20年までには中国に続く、日本、インド、韓国、EUの航空協定締結も予定。その実現に向けては航空安全の強化も求められている。

また、国士舘大学21世紀アジア学部教授の小島末夫氏は「欧米系インテグレーターの対アジア戦略」について、これまでの動きを振り返りながら新たな動きを取り上げた。エクスプレス4社によるアジア太平洋地域のシェアはDHLが圧倒的に高く、次いでフェデックス、UPS、TNTの順(14年時点)。最新の動向として、上海浦東国際空港西地区貨物ターミナルで08年のUPS、12年のDHLに続き、今年3月にフェデックスのハブが完成する予定で、「大手3社のハブが同一空港に集まるのは世界中でも非常に稀有な例」と注目した。

さらに、シンガポールにおけるEC関連の動きにも着目。中国EC大手アリババは東南アジア最大規模のECモール会社LAZADAに出資した上で、同社がシンガポールの食品ネット販売大手レッドマート社を買収。同社の買収に失敗したAmazonも、今年第1四半期中には同国へ進出すると見られており、シンガポールを起点にEC大手2社が「激突する構図になる」と指摘した。なお、同国には16年11月にDHLが南アジアハブを開設し、12年10月にはフェデックスも南太平洋地区ハブを稼働している。

●中国では寡占状態の航空運輸業界でEC業者が参入、韓国は仁川空港を世界第2位へ

続いて、アジア主要国・地域の航空貨物輸送動向が報告された。関西大学教授の飴野仁子氏は日本市場について発表。グローバルサプライチェーンの高度化は必ずしも日本の航空貨物市場の成長には直結しておらず、航空会社やフォワーダーの拠点をいかに整備、誘致するか検証する必要があるとともに、航空貨物の特徴を活かしつつ、新興諸国市場の成長を取り込めるビジネスモデルの構築が求められることを示唆した。

中国市場の報告はIDE−JETRO新領域研究センター上席主任調査研究員の大西康雄氏が担当し、まず、同国航空運輸業界が3社(中航集団、東航集団、南航集団)で寡占状態にあるとともに、限られたフォワーダーのみが大手航空会社と直接契約できるために貨物追跡などに不便さがある現状を伝えた。こうした中、最近ではアリババなどのEC業者が自社で航空機をリースして輸送するケースが目立っている事例を報告。さらに、同国では20年までの5ヵ年で善幸の民用空港を244ヵ所まで増やす計画を持ち、「完成すれば米国などに近い人口カバー率になる」とした。

韓国は東京海洋大学準教授の渡部大輔氏がとりまとめ、大手航空2社(大韓、アシアナ航空)が全体の3分の2を占めるとともに、05年に新規参入したLCCも国内線・近距離国際線で急成長しているとした。国際貨物の99%を扱う仁川空港ではインセンティブよる積極的なトランジット貨物の取り込みを進めるとともに、中国向けEC貨物の急増にも対応。17年には第2貨物ターミナル地区が整備され、20年には韓国高速鉄道による空港への客貨混載も予定し、長期計画ではさらなる競争力強化で取扱量を世界第2位まで引き上げることを目標に据える。

シンガポールは東京工業大学準教授の花岡伸也氏がチャンギ空港の動向を中心に紹介。取扱貨物量は06年以降伸び悩むが、輸出入金額は上昇し続けており、「医薬品や化学薬品などの高付加価値品をメインターゲットとした成果が表れている」と分析した。また、シンガポール航空カーゴ社のではフレーターを最大時(06〜07年)の16機から8機まで減らし、今期中には7機体制へ移行して、将来的にはフレーター事業からの撤退も検討。背景には、エミレーツ航空ベリー便の高い価格競争力があるとした。

台湾はIDE−JETRO在台北海外調査員の池上寛氏がレポートし、16年の輸入貨物は過去最高となり、トランジット貨物よりも輸出入貨物へのアプローチが進んでいるほか、中国のEC市場拡大の恩恵も受けているとした。同国の上位航空会社には全日本空輸も食い込んでおり、沖縄ハブ事業の影響を想定。他方で、桃園空港では施設老朽化から第2ターミナル拡張と第3ターミナル建設を進め、今年1月からは第3滑走路(4000b)の建設に向けたアセスメントがスタートし、25年からの共用開始を目指す。

●LCCベリーでの貨物輸送に可能性も

報告会で登壇した発表者によるパネルディスカッションではLCCおよび各国内の貨物動向メーンテーマに意見が交わされた。

花岡氏はまず、『LCC』の定義を「格安航空会社でなく低費用航空会社」であると強調した上で、貨物事業の可能性を示唆。昨年6月のCAPA(アジア太平洋航空研究所)でのLCCカーゴセッションでは「春秋航空などは貨物事業に好感触で、バニラ・エアも興味を持っている。ピーチ・アビエーションは参入の意志を持たないことを明言している」とし、「LCCが貨物をやらない理由はなく、チャンスがあればベリーカーゴを取りにいくこともあるのではないか」と述べた。

渡部氏は「貨物LCC」と呼ばれる小型フレーターを使用した貨物専用航空会社の参入事例を紹介。12年に設立された韓国のエア・インチョンでは小型フレーター2機を運行し、緊急貨物や少量・長尺物、危険物の輸送にも柔軟に対応できることが特長だが、物量波動が最大の課題で成田便からも撤退している。そのため、「エア・プサンなどフルサービスキャリア子会社のLCCが貨物を取りに行く方が、空港ハンドリングやフォワーダーとの付き合いを活かせる」とした。

モデレーターを務めた池上氏は、LCC貨物市場の動きを「今後は基本的に旅客が中心となり、空いたスペースで副次的に貨物を運ぶことになるが、キャパシティが増えれば航空会社間の競争も十分に考えられる」とまとめた。

各国国内航空貨物市場については、大西氏が中国の航空貨物の7割を国内貨物が占め、国際線はインテグレーターがシェアを占める状況を報告。貨物の輸送需要も、従来の沿海東部から中部内陸へシフトしているとした。規制の強い中国航空業界だが、急増するEC貨物をさばくため、たとえば昨年のシングルデー(11月11日)には商品配達用に100機の航空機が調達されたほか、大手宅配会社の順豊エクスプレスなどは既に14機の貨物機を運行するなどEC業者の動きが広がっており、「新手のフォワーダーのようになっている」と指摘した。

渡部氏は韓国の国際航空貨物拠点について「仁川に一極集中しており、北東地域の工場地帯の製品を運ぶには非効率となっている」とした上で、新空港計画は金海国際空港の拡張で決着したが「産業立地に合わせた航空拠点の検討が必要」と分析した。飴野氏は日本の航空貨物市場を展望し「全日本空輸の沖縄ハブは国内貨物とアジアを繋ぐユニークな取り組みで、引き続き伸長するだろう。国際貨物では成長するアジア市場の取り込みがテーマだが、国内貨物もまだ需要は見込まれ、高品質な価値を付加できるかが重要になる」と述べた。

カーゴニュース 3月16日号

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