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物流業界ニュース(物流/運送情報)

物流費上昇で「関税コスト削減」に照準

EPA活用促進へ官民のサポート拡大

サプライチェーンの混乱やウクライナ情勢など地政学リスクの高まり、金融引き締めの動きも加わり、国際貿易を取り巻く環境は不透明さが増している。国際秩序の変化とブロック化が進む中、EPA(経済連携協定)・FTA(自由貿易協定)は政治・経済の連携強化の枠組みとして期待されている。物流費が上昇し、企業はこれらの協定を活用した関税コスト削減に関心を強めており、官民のサポートも拡大している。

低い中小企業利用率、認知不足や負担増が課題

EPA・FTAは、幅広い経済関係の強化を目指して貿易や投資の自由化・円滑化を進める協定。WTO(世界貿易機関)より進んだ貿易の自由化や、WTOでは扱われない分野でのルール作りが可能で、貿易の投資、自由化により、日本企業が海外に進出するための環境を整備し、経済活性化に寄与する。資源、エネルギー、食料等の安定的輸入の確保や輸入先の多角化につながるほか、政治・外交上のメリットもある。企業にとって大きなメリットとなるのが、相手国の関税撤廃による輸出競争力の強化や、日本の関税撤廃による調達コストの低減。現在、日本は50ヵ国との間で20のEPAが発効済み。とくに1月にRCEP協定が発効したことに伴い、新たにEPA活用に取り組む企業が大幅に増加している。しかし、中小企業では利用率が低く、制度や手続きの認知不足や原産地証明等に関する事務的負担が指摘されている。

情報提供・相談窓口開設、電子化の動きも

こうした中、中小企業も含めたEPA・FTAの利用促進へ関係行政や民間団体・企業などの支援が拡大している。税関では、「原産地規則ポータル」を開設。EPA原産地センターが日豪協定、TPP11協定(CPTPP)、日EU協定、日英協定、RCEP協定(豪州、ニュージーランド仕向け)の自己申告制度を利用した日本からの輸出に関する相談をメールで受け付ける。また、農林水産省では農産物・食品の輸出競争力強化に向け、「EPA利用早わかりサイト」を開設。税関での超過支払い是正などに関する「EPA利用相談窓口」を設置している。経済産業省は中小企業等のEPA利用を増やすため、「EPA活用推進会議」をこのほど発足させた。同会議を通じ、業種ごとにEPA活用の標準作業フローをまとめたマニュアルを作成。輸出者と取引先との協力を円滑化するための標準書類フォーマットを策定する。EPA活用のためのプロセスを簡素化・電子化し、企業をワンストップで支援するデジタル・プラットフォームを構築する。

煩雑な手続きサポート、専門家のカウンセリングも

煩雑な手続きに対するサポートも広がる。日本貿易振興機構(JETRO)は、輸出の初心者を含めた企業のEPA利用を後押しするため、EPAの根拠書類や原産地証明書類、一般的な貿易書類を作成できるExcelのツール「原産地証明ナビ」を提供。トレードワルツは、貿易プラットフォーム「TradeWaltz」で、追加サービスとして原産地証明書のオンライン自動発行を検討している。デロイトトーマツは、FTAを活用するために関税率や原産地規則などをWeb上で簡単に素早く検索・比較できるソリューション「Trade Compass」の提供を開始した。関税コスト削減効果額を試算したり、関税率・為替変動や主要輸出入相手国を踏まえたサプライチェーンの検証を行える。関係税理士法人による関税カウンセリングサービスも提供する。通関業者も、荷主向けにEPA・FTA利用コンサルティングを行う企業も出てきた。日本通関業連合会では、EPA・FTA等の利用に関するコンサルティング能力のニーズを念頭に、通関士の専門性向上を図る研修に注力。税関OBなどが参加するNPO法人輸出入手続サポートファーム(EIPS)も、原産地規則等についてコンサルティングやセミナーを展開していく。日本関税協会が行ったアンケート調査によると、EPAの利用経験がない理由として最も多かったのは、「取扱品目について関税がすでに撤廃されているなどEPAを利用する必要がない」との回答だが、2位以下は、「社内でのEPA利用の体制が整っていない」、「原産地規則を満たすか否かを確認するための事務負担が過大」が続く。体制整備や負担軽減など企業ごとにきめ細かなサポートが求められそうだ。

カーゴニュース7月19日号

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