1. 【富士物流TOP】
  2. 物流業界ニュース
  3. 2022年7月
  4. 活況の物流不動産市場に“暗雲”広がる

物流業界ニュース(物流/運送情報)

活況の物流不動産市場に“暗雲”広がる

需給バランスが緩和し建設費が上昇

コロナ禍でのEC関連需要の高まりを背景に、活況が続いていた物流不動産市場に“暗雲”が広がっている。近年の大量供給により需給バランスが緩和し、空室率は上昇傾向。東証REIT指数も物流セクターは下落が見られる。エネルギーコストの上昇を受けた鋼材価格の値上がりも開発コストの重しとなる。物価高や景気の減速も物流不動産需要には向かい風となる。

大量供給の影響で首都圏の空室率は4%台に

CBREの調査によると、2022年1〜3月の首都圏大型マルチテナント型物流施設の空室率は対前期比2.1pt上昇の4.4%。新規需要は安定しているものの、26万坪の大量供給の影響で、19年以来の高い空室率となった。新規需要は安定しているものの、大量供給との“ギャップ”が存在しているという。新規供給が集中しているエリアでは、空室を残しての竣工も見られる。「23年にかけての大量供給により、需給緩和の基調に変わりはない」との見方から、空室が長期化しているエリアなどでは賃料の弱含みも予想されている。リーシング需要の高まりを背景に、外資系が物流施設のリーシング事業に参入する例もある。

REIT指数、物流セクターは最大の下落幅

CBREによれば、1〜3月の東証REIT指数は対前期末比で3.1%下落。ホテル、オフィスセクターに回復がみられる一方で、物流セクターは10.2%減と下落率が最大だった。前期末に物流セクターは9.1%上昇しており、配当利回りが低下していた中で金利が上昇したことを受け、株価が調整された。円安は海外投資家が日本の不動産を取得する際に基本的にはプラスに働く一方で、資源価格の上昇は開発コストのさらなる上昇につながっている。最近成約された高額案件でも、物流施設の開発を目的に土地の入札に参加した投資家が、建設費が想定以上に上昇したため、成約を断念したとの事例が見られた。今後、物流施設の賃貸市場では、需給バランスの緩和により賃料の上昇ペースはやや鈍化する見込み。開発案件においては土地価格、建設費の上昇分を賃料に転嫁できる余地は限定的で完成した物件について売主が想定する売却価格によっては、キャップレート(不動産投資の期待利回り)のさらなる低下につながることも考えられるという。

建築費が前年比1割程度上昇、投資に影響か

不動産情報サービスのJLLが各デベロッパーや投資家へのヒアリングにしたところ、21年の前半頃に想定した物流施設の建築費は40〜45万円/坪だったのが、それが今年6月には45〜50万円/坪と、この1年間でおおむね5万円/坪、割合にして1割程度上昇しているという。一般的に、物流施設は他のアセットタイプと比べて相対的に地価の低い場所に立地し、土地と建物を合わせた投資額に対する建物の割合が大きい。建築費の上昇は、総投資額を変えないのであれば土地に対する負担余力を縮小する。土地が安く、平屋の施設を建てやすい「地方」への熱視線も高まっている。CBREの「物流施設利用に関するテナント調査2022」では、今後3年間で「倉庫の総面積は拡大する」と回答したテナント企業が全体の75%を占めるなど依然として需要は堅調。サプライチェーンの混乱に備えた在庫の積み増し傾向などもスペース需要を押し上げる可能性があるが、需給バランスの変化が引き続き注目される。

カーゴニュース7月21日号

powered by cargo news

富士物流は、物流・倉庫ソリューションの一括アウトソーシング(3PL)を実現します。