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物流業界ニュース(物流/運送情報)

厚労省/改善基準告示会議 改正の方向性提示も労使合意は再び持ち越し

原案作成のタイムリミット迫る中、平行線続く

厚生労働省は18日、トラック運送業の改善基準告示改正を検討する専門会議の第8回会合を開催した。7月20日開催の前回会議で確認した労働者代表と使用者代表の意見の相違点を踏まえ、事務局が項目ごとに改正の方向性を提示したが、労使双方の合意は再び持ち越しとなった。すでにバスとタクシーは3月に改正案はまとまっており、トラックだけが足踏みしている状況だ。厚労省は12月にトラック、バス、タクシー3業界そろって改善基準告示を改正する姿勢は崩していない。所要の手続きを行うためには、改正原案の作成は9月が最終リミットになると想定され、労使の議論の平行戦が続く中、ぎりぎりのタイミングで調整を図っていくことになる。

月の拘束時間上限「320時間」で対立

今回事務局は、1ヵ月の拘束時間を見直す考え方として「274時間(時間外・休日労働=月79時間)〜284時間(時間外・休日労働=89時間)を超えないものとする」とし、労使協定がある場合は、「1年間3300〜3408時間を超えない範囲で、1ヵ月294時間〜310時間まで延長可能とする」案を提示した。こうした考え方の根拠としては、(1)脳・心臓疾患の労災認定基準(月100時間)、(2)働き方改革関連法で定められた時間外労働の上限規制(年960時間)、(3)休日労働はできるだけ少なくすべきこと、(4)時間外・休日労働を月80時間未満に抑える水準とすること――などがある。これに対して使用者側は、「1ヵ月の拘束時間は284時間とした上で、年3408時間を超えない範囲で、年6回を限度に1ヵ月320時間まで延長可能とすべき」という主張をゆずらず、馬渡雅敏委員(全日本トラック協会副会長)は「ドライバーの長時間労働を抑制したい思いは経営者も同じ」とあらためて強調した。馬渡氏は、着荷主の指示が長時間の待機の主な原因となっており、それが解消しない以上、「事業者の努力のみで改善基準告示を遵守することは困難」と主張。厚労省が荷主に対して働きかけを行う新たな制度を念頭に、改善基準告示の改正後、「荷主がドライバーに無理なことを言わなくなるまでは」一定の経過措置も必要との考えを示した。一方、労働者側は脳・心臓疾患の労災認定基準を踏まえ、「時間外・休日労働が月80時間・100時間を超えない範囲で見直し、1ヵ月275時間を基本に、年3300時間を超えない範囲で年6回を限度に294時間まで延長可能とする」という従来の考えを堅持。公益代表の首藤若菜委員(立教大学教授)は「拘束時間の上限を320時間とした場合、脳・心臓疾患の労災認定基準を超えるため問題がある」と指摘した。

勤務間インターバル「11時間」に反論も

1日の拘束時間と休息期間についても労使双方の意見の一致は見られなかった。事務局は、「勤務終了後に継続して11時間以上の休息期間を基本とし、9時間を下回らない」とし、「1日の拘束時間は13時間を超えず、延長する場合の最大拘束時間は15時間とする」考えを示した。いわゆる勤務間インターバルを「11時間」を基本とすることはバス、タクシーと足並みをそろえた考え方だが、使用者側は反対を表明。トラック運送業務は繁閑波動があるため、1日の休息期間は「11時間以上」を基本とした上で繁忙期には11時間の休息が困難な場合があることを想定し、「1週間平均で9時間を下回らないようにすべき」と主張した。これに対し、「11時間以上」とする案におおむね賛同していた労働者側は、1日の拘束時間と休息期間の規定はドライバーの健康維持を考慮するものであり、1週間平均で下限時間≠定める考えは告示改正の趣旨に沿わないと反発した。運転時間について事務局は「2日を平均し1日あたり9時間、2週間を平均し1週間あたり44時間を超えない」とする現行の規定を維持する案を提示。一方、使用者側は、拘束時間など他の基準が詳細に決まるのであれば運転時間の規定は不要であるとし、業務形態の異なる長距離と近中距離で基準を分けることができなければ廃止すべきと提案した。労働者側は、過労運転や交通事故防止の観点から存続すべきであり、運転時間の規定を廃止することが「事業者に間違ったメッセージとして伝わるおそれがある」と懸念を表明。事務局からは「運転時間の規定は改善基準告示の中核をなす規制であり、これを廃止することは大きな規制緩和だ」とくぎを刺す場面もあった。その他の項目でも一部を除き労使双方の考えには隔たりがみられた。座長を務める藤村博之委員(法政大学教授)は「重要な規定について労使双方は平行線のままになっている。改正案をまとめるタイムリミットが近づいていることを念頭に置いて議論すべき」と強調した上で、次回会合で一定の方向性を打ち出すとした。

カーゴニュース8月23日号

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