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物流業界ニュース(物流/運送情報)

通関連/関税協会/NACCS「税関発足150周年記念シンポジウム」を開催

大転換期にある世界貿易をテーマに

日本通関業連合会(岡藤正策会長)、日本関税協会(渡辺裕泰理事長)、輸出入・港湾関連情報処理センター(NACCSセンター、本社・東京都港区、平松均社長)は11月25日、「税関発足150周年記念シンポジウム」を共同で開催した。「大転換期にある世界貿易と税関─官民パートナーシップの将来像─」をテーマとし、経済安全保障や環境、人権といったグローバルサプライチェーンの新たな課題についても取り組みが報告され、税関の果たす役割を展望した。

官民パートナーシップのあり方を展望

主催者を代表して通関連の岡藤会長が挨拶し、「1872年11月28日に前身の『運上所』から名称を『税関』にあらため、以降、税関はわが国の貿易経済の発展および安全・安心な社会の実現に大きな役割を担ってきた。今年の11月28日に150周年を迎える」とし、財務省関税局など関係者に祝辞を贈った。「ロシアによるウクライナへの軍事侵攻、パンデミック、米中対立などを背景に、資源や食糧価格の高騰、サプライチェーンの混乱が発生し、グローバリゼーションの危機に直面している。先行きが不透明な状況下だが、今後の世界貿易を展望し、税関の果たすべき役割や官民パートナーシップのあり方を考えていきたい」と述べた。続いて世界税関機構(WCO)の御厨邦雄事務総局長が基調講演を行い、税関の今後の課題として、データの活用、多国間の環境協定における貿易措置への対応などを指摘。「国境やナショナルの重みが増しているが、それでもなお、税関が他の国とつながる役割を担っている。税関のさらなる発展に期待している」とエールを送った。

デジタル化、ペーパーレス化が不可欠

財務省の諏訪園健司関税局長、みずほリサーチ&テクノロジーズ調査部の菅原淳一主席研究員プリンシパル、通関連の岡藤会長、NACCSセンターの平松社長がプレゼンテーションを実施。御厨氏を加えてパネルディスカッションを行い、青山学院大学の岩田伸人氏名誉教授がモデレーターを務めた。御厨氏は経済安全保障の問題に触れ、「輸出規制や経済制裁の観点から輸出にもう少し注意を払う必要がある。それにはデータが強みとなる」と指摘。「“フレンドショアリング”と言われるが、サプライチェーン・レジリエンスの受け入れ国となるためには、デジタル化やペーパーレス化が欠かせない」と語った。菅原氏はWTO(世界貿易機関)の役割を問われ、「貿易投資のルールの大半はWTOルールであり、今こそ重要性が増している。ただ、“審判”機能がうまくいっておらず、紛争解決機能の回復が必要」と強調。「人権、気候変動、経済安全保障に関わるサプライチェーンの可視化が求められ、その際にはDXが力になる」と述べた。諏訪園氏は、経済安全保障に関連し、「輸入に比べ、輸出品目の分類は粗く設定されており、より精緻にする必要がある。具体的にどの品目を対象とするかが検討課題だ」と説明。水際対策では民間との連携も重要であるとし、「通関業者の協力により詳しく調べたところ、韓国を経由したロシア向けの貨物だったという事案があった」と報告した。

通関士の専門性、幅広い知識も必要

岡藤氏は、「全国の通関業者約1000社のうち250社あまりがAEO通関業者となっている。AEOのベネフィット拡大もご当局にお願いしながら、取得拡大の働きかけを強化したい。通関士の質・コンプライアンスの向上も課題で、専門研修のほか経済安保、人権といった新規の課題に関するセミナーもタイムリーに開催していきたい」と意欲を見せた。平松氏はNACCSの利用の現状として、「通関業務は電子化率が99%を超えている」一方、荷主に対するサービスの認知度向上を課題に挙げた。具体的には、「船積指図書(S/I)情報登録業務(SIR業務)」について業務の認知度が低いとし、荷主と通関業者の情報のやり取りのデジタル化が必要だとした。シンポジウムのテーマである官民パートナーシップについて、「現場からのビビットな活動を聞くことが重要」(御厨氏)、「転換期はリスクだけでなく、チャンスも生まれる。それを活用するには官民パートナーシップが不可欠」(菅原氏)、「NACCSが利用者のニーズに応えていくには新しい技術、新しい時代に向き合うことが必要」(平松氏)と強調した。岡藤氏は、ミャンマー、モンゴルの通関業会とのMOU(覚書)をはじめ海外交流に意欲を見せるとともに、「通関士自身が専門性を高め、幅広い知識を身に着け、より高度なコンサルを通じて、依頼者に貿易取引を提案できるような通関士を育成する。ダイバーシティの推進や働き方の革新を進め、若い優秀な人材が入ってくる業界にしたい」と述べた。

カーゴニュース12月1日号

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