物流業界の今と未来

みなさんが目指している物流業界、大切な社会人への第一歩として、自分に本当にふさわしい業界なのか気になりますね。そんなみなさんに物流業界のホントのところをお話しましょう。

物流業界の現状

モノは減るが重要度は増す

じつのところ、国内のモノの動きは90年代のピーク時を境に減少傾向が続いています。国内の工場がアジアを中心に次々と海外へ移転したことが大きな要因となっていることはみなさんの想像にも難くないはず。しかし、それに伴って物流が軽視されてきているのかと言えば、それはまったくの逆。ITが飛躍的に進歩したことでいろいろな可能性が広がったように、リアルな物流の世界でもその潜在力に熱い視線が寄せられています。

これまで店舗をはじめ、テレビやラジオCM、新聞広告やカタログなどでの売り方が主流でしたが、ITの高度化に伴い、パソコンやスマートフォンなどを使ったインターネット通販が急速に拡大しました。これにより、より多くの種類(選択肢)の中から商品を選びたい、より早くその商品が欲しいといった消費者ニーズに応えるために、物流の仕組みはこれまで以上に複雑にかつ高度化しています。

また、流通や物流業界では、「オムニチャネル」という言葉があるように、商品を売る側(企業)では、より多くの販売を目指すうえで、販売の窓口(チャネル)を問わずにあらゆる場所で商品の購入を可能とする仕組みや戦略が重要視されています。

このように、企業が販売戦略を強化するうえで、物流は企業にとって重要な経営戦略(他社との競争に勝つためのポイント)として位置付けられ、商品の研究開発や販売活動に専念するために物流をプロの専門家へ任せるという考えの他にも、物流が重要な経営戦略であるからこそ、プロの専門家へしっかりと任せたいと考える企業が増えています。

そして、それを実現させるために企業活動にまつわる物流を一括して物流専門会社へ任せる、いわゆる“サードパーティーロジスティクス(以下3PL)”という物流のかたちが注目され、その市場は拡大を続けています。

再編が進む物流業界

そもそも物流業界はすそ野の広い業界。トラック、船、飛行機、倉庫、フォワーダーなど、従来はそれぞれの分野の会社が、その枠内でノウハウを活かして事業をおこなってきました。しかし、顧客となる企業のニーズは「一括して任せる」方向へ大きく舵をきり始めています。これに対応するため、主要な物流会社は、そのほとんどが3PLの提供をサービスの柱にすえています。しかし今までの事業の幅のままでは企業物流全体を引受けるのに無理が生じてしまいます。

そこで、自分に足りない分野を補完する目的で、物流会社どうしのアライアンス(提携)が盛んにおこなわるようになりました。トラック会社と航空会社の連携、営業拠点を地域補完する連携もあります。また企業から物流業務を一括して引受ける一環として、その企業傘下の物流部門会社(一般に物流子会社といいます)を自社に吸収する物流会社も増えています。いずれの場合も、3PLがキーワードとなって物流業界の再編をうながしているのです。

これからの物流業界

グローバル化する経済。それをスムーズにするのが物流会社の使命

3PLへの動きは国内だけにとどまりません。冒頭のとおり、日本企業の製造拠点は次々と海外へ進出し、今や原材料の調達や製造、販売は国際的な分業が当たりまえの時代となりました。世界に広がった企業の活動をムダなくスムーズに最適化するのは血脈である物流の使命です。そして物流会社の顧客となる企業では、その実現のために国際的な3PL体制を構築するニーズが高まっています。

これに応じて、今、日本の物流会社も盛んに海外拠点を開設し始めていますが、一部の新興国では道路などのインフラに未整備の部分が多く、また、関税や許認可などの国ごとに異なる複雑な制度が物流のボトルネックになっています。そういった諸国の事情を感じさせず、日本国内と同様に3PLサービスを提供するのが物流会社のこれからの腕の見せどころです。企業の活動範囲が広がるにつれ、今後も物流はますます世界に広がって行くでしょう。