消費者庁「送料無料」表示見直しへ運送業界から意見聴取

「運送の“対価”、消費者の理解不可欠」と主張

消費者庁は6月23日、「送料無料」表示の見直しに関する意見交換会の第1会合を開催した。我が国の物流革新に関する関係閣僚会議がまとめた「物流革新に向けた政策パッケージ」において、通販などの「送料無料」表示の見直しに取り組むことが盛り込まれたことを受け、表示に関する実態や見直しによる影響を把握するため、運送業者、荷主と意見交換するもの。第1回会合では、全日本トラック協会の馬渡雅敏副会長が、「送料無料」表示が「輸送はコストがかからない」という誤解を生じさせるとし、表示の見直しと消費者の理解の必要性を訴えた。

運賃・料金は送料に適正に反映されるべき

会議の冒頭、植田広信審議官は「現在、我が国は物流の『2024年問題』に直面して、各方面で対応が進められている。今回テーマとなる『送料無料』表示について政策パッケージでは、運賃・料金が消費者向けの送料に適正に転嫁・反映されるべきとの観点から、『送料無料』表示の見直しに取り組む――と明記された。これを受け、消費者庁では関係省庁と連携し、物流が持続可能なものとなるよう、また、最終的に荷物を受け取る消費者に物流のコストを意識してもらうため、運賃、送料が無料と誤解を招きかねない広告等の『送料無料』表示の見直しに取り組むこととした」と説明。さらに、「各方面と意見交換を行っていくが、まずは運送業者の要望をしっかり把握したい。今後は通信販売業者が『送料無料』表示により、どのような効果を狙っているのか、また、配送料がどのように商品価格に反映されているのか、あるいは『送料無料』とは言いながら、実際には消費者が負担しているのか、消費者が負担していないとすれば誰が負担しているのか――。様々なパターンが考えられるが、これを把握し、『送料無料』表示を見直すことによって消費者、事業者にどういった影響があるのかについても把握していきたい」と述べた。

「輸送にコストはかからない」と誤解生む

続いて、全ト協の馬渡副会長が、通販貨物についてもラストワンマイルの配送に先立ち、BtoBの輸送が生じていることを説明し、「荷物を消費者に届けるためには様々なコストがかかっている。送料は運送の“対価”であり無料ではない」と主張。燃料費、車両価格、人件費等のコストが上昇し、価格転嫁が必要となっている中で、「価格転嫁を理解していただくには、荷主の先にいる消費者の理解が欠かせない」と訴えた。また、「『送料無料』という言葉が物流に対する消費者のコスト意識をないものにし、『輸送にはコストがかからない』という間違った考え方を植えつけることになる」と述べた。「送料無料」という表現が、運送業界の人材確保にも悪影響を及ぼしているとし、「仕事を選ぶ際に、(ドライバーは)『ただで運んでいるのか』という誤解を与える」と指摘。「運送業者はエッセンシャルワーカーと言われ、コロナ禍でも業務に従事し続けた。特定のところにしわ寄せがいくのではなく、この機会にサプライチェーン全体でどのようにコストを分担していくのか考えていかなければならない。2030年に荷物の30%が運べなくなるとの試算があるが、それより前に、『2024年問題』をきっかけに物流を維持できなくなるおそれがある」と危機感をあらわにした。そのうえで「『送料無料』の表現はやめてもらいたい」と業界の意向を表明し、「送料は当社にて負担します」、「送料は〇〇円いただきます」、「送料は別途負担いただきます」というように、「送料がかかっていることがわかる表現にしてほしい」と要望。トラック運送業界の現状として、保有車両台数10台以下の小規模事業者が6割近く占め、保有車両台数の少ない事業者ほど営業損益率のマイナスが大きいことも報告。1989年に約10億個だった宅配便個数が、2021年には約5倍の50億個に届くまで増えていることや宅配の再配達問題にも触れ、「何回再配達しても、料金は1回分」という問題を提起した。また、「苦労して再配達しているのに、かたや『送料無料』と言われるとやりきれない」、「『送料無料』なんて表現を許しているから賃金が上がらない」、「物流を軽くみている表現だ。消費者の物流に対する意識を変えてほしい」といった運送事業者、ドライバーの声を紹介。トラック協会の取り組みとして、「『送料無料』じゃありません!」のインターネット広告の掲載などを報告するとともに、「『送料無料』というテーマだけをとりあげてもらえることは少ない。今回の意見交換の機会はありがたい。無料で運んでいるのではないことをしっかりご理解いただきたい」とあらためて訴えた。

カーゴニュース 07月04日号

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