矢野経済研究所 22年度の物流市場は24.6兆円見込み

取扱量物量は横ばいも運賃が上昇

矢野経済研究所(本社・東京都中野区、水越孝社長)は物流17業種総市場を調査し、17業種別の動向、参入企業の動向、将来展望を明らかにした。国際物流の運賃高止まりが上期まで継続し、2022年度の物流17業種総市場規模は前年度比6.1%増の24.6兆円を見込む。

国際物流関連業種で市場規模が拡大

21年度の物流17業種総市場規模(17業種各市場の積み上げ)は、前年度比15.7%増の23兆1860億円と推計した。新型コロナウイルス感染拡大の影響により世界的に経済が停滞したことで、20年度の物流市場も縮小したが、21年度は多くの産業で事業活動が再開されて荷動きが回復。各物流業種における取扱物量もあわせて増加した。しかし、21年度の市場規模が大幅に拡大した要因(19年度比12.9%増)は、物量の拡大といった要因ではなく、運賃等の物流費の高騰が挙げられる。20年度に発生した海上輸送と航空輸送の需給ひっ迫による運賃高騰が21年度も継続したことで、海運や航空貨物輸送、フォワーディング等の国際物流に関連する物流業種で大幅に市場規模が拡大したことから、物流17業種総市場を押し上げた。なお、国内物流をみると、依然として半導体不足は続いたものの自動車業界等で荷動きが回復し、3PL等の物流業種で市場規模の復調がみられた。また、20年度に続きECによる高い輸送需要により、宅配便市場は堅調に推移。しかし、取扱物量という観点では、コロナ禍以前の19年度水準に完全には戻っておらず、コロナ禍のダメージから回復途上にあるとみられる。22年度の物流17業種総市場規模は、前年度比6.1%増の24兆6005億円を見込む。国際物流は半導体不足が解消し自動車輸送等が好調に推移するほか、上期までの海上・航空輸送の需給ひっ迫による運賃等の物流費高騰により、市場規模は拡大する見通し。国内物流は、コロナ禍から徐々に回復する一方、食料品等の値上げによる消費活動低迷の影響もあり、取扱物量は横ばい程度で推移する見込み。ただし、運賃等の物流費が上昇することで、市場規模としては拡大するとみられる。

海運とトラック長距離輸送の市場に注目

注目市場としてはまず、国際物流の中心を担っている海運を挙げた。20年度は米中貿易摩擦やコロナ禍による影響で、港湾運送の混乱やコンテナ不足が発生したことで海運需給はひっ迫状態となった。21年度には、自動車産業の持ち直しをはじめ経済活動の再開に伴い、輸送需要が増加したが、供給体制は限られていたため、海上運賃がかつてないほどに高騰。こうした状況は22年度上期頃まで続いたが、23年度中には正常化し、需給ひっ迫状態が解消される見込みとなっている。国際物流がますます興隆を見せる中で、貨物輸送量の99%以上を担う外航海運の力は欠かせない。21年度の市場規模拡大は運賃上昇による要因が大きかったが、需給ひっ迫状態が解消された今、いかに国内外の輸送需要を取り込み、海上輸送量を増やしていくかがポイントとなっている。大型トラックによる輸送量が大半を占める長距離輸送にも注目する。カーボンニュートラルや物流の「2024年問題」への対応として、輸送方法や輸送手段を見直す動きが拡大。長距離輸送は、大型トラックが活用されることが多いことから大型免許が必須だが、労働人口が減少していく中、働き手の確保が特に難しい分野で、「深夜の時間帯に、一人のドライバーが、一台の大型トラックで、長時間かけて荷物を運ぶ」という従来のビジネスモデルが、近い将来には成り立たなくなることが懸念される。そこで、トラック輸送方法の効率化や無人化などトラックによる長距離輸送を見直す検討が始まると同時に、トラック輸送から鉄道輸送や内航海運などへ輸送手段を変更する動きもみられる。これらの輸送方法や輸送手段の変更は荷主の協力が不可欠であり、今後の国内物流市場は、いかに物流事業者と荷主が協力して取り組むことができるかにかかっているとしている。

カーゴニュース 08月01日号

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