財務省関税局 リアルタイム口座振替方式で新機能追加へ

輸入者等に関税等納付額を事前に通知

財務省関税局は、関税等を直接、輸入者等の口座から直接引き落とせる仕組みである「リアルタイム口座振替方式」で、口座振替予定額を通知する新機能を追加する。現行では、同方式で輸入申告を行った場合、税関による輸入申告の審査終了後、リアルタイム口座振替方式用の銀行口座から即時に関税等が引き落とされるため、不安を持つ輸入者も多かった。事前に関税等納付額がわかれば、輸入者にとっても利用しやすくなり、リアルタイム口座振替方式への切り替えが進み、通関業者による立て替え払いの解消につながる可能性がある。

関税等納付額を確認した後に口座振替が可能に

回の新機能の追加は、日本通関業連合会が2021年に会員事業者向けに行ったアンケート等で、リアルタイム口座振替方式について「関税等の納付額を事前に通知してほしい」との意見があったことを踏まえたもの。財務省関税局では、関税等の納付に関する納税環境整備の一環として、リアルタイム口座振替方式に口座振替予定額を通知する機能を追加することとした。機能の詳細を検討中で、実装の時期は未定。新機能追加後は、その新機能を選択・利用することで、税関による輸入申告の審査終了後に、NACCSにより輸入申告を行った者に対し関税等の納付額についての口座振替予定額が通知される。口座振替予定額の通知により関税等の納付額を確認した後に、NACCSにより個別に納税指示を行った上で、NACCSに登録されたリアルタイム口座振替方式用の銀行口座から関税等を納付することが可能となる予定。納税者である輸入者(またはリアルタイム口座方式を利用している通関業者)は、口座振替予定額の通知情報を受け取って、関税等の納付額を確認し、口座残高の確認、必要であれば社内の会計手続きを完了してから、リアルタイム口座振替方式用の銀行口座から関税等を納付することができるようになり、予期せぬ口座残高不足に起因する輸入の許可保留を回避し、スムーズな納税手続き、貨物の引取りにつながる。

切り替えのハードル下がるも、手間増える?

通関業者によると、輸入者のリアルタイム口座振替方式への切り替えまたはその相談が増えているという。昨年来、公正取引委員会が通関業者による関税等の立て替え払いについて、「独占禁止法上の問題につながるおそれがある」との見解を示したことが背景にあるとみられる。新機能が追加されれば、「振替額がわからないまま、いきなり口座から引き落とされる」という不安が解消されるため、利用のハードルは下がる。ただ、リアルタイム口座振替方式で、納付額通知機能の利用を選択する場合、「通関業者にとってはひと手間増える」との指摘もある。現行の審査終了後の即座引き落としと比べ、申告から許可までの工程に納付額通知というワンクッションが増えることになるため、物流の停滞を懸念する輸入者に対しては、リアルタイム口座振替方式への切り替えへの動機づけが弱いとの見方もある。なお、公取委が関税等の立て替え払いに監視を強めている中で、輸入者がリアルタイム口座を開設したものの、残高不足のために結局、通関業者が立て替えているようなケースもあり、「アリバイづくり」も疑われている。関税等の納付が完了しなければ輸入貨物を引き取れないため、スケジュール変更に伴う各種キャンセル料が発生しないように通関業者がしぶしぶ立て替えていることもあるようだ。公取委は、輸入者の違反行為を未然に防ぐためにも、通関業者から荷主に対してリアルタイム口座振替方式の活用を推奨することを提案している。輸入者の口座が残高不足だった場合でも、「必要金額を通知し、それが振り込まれるまでは何もせず、通関業者としては立て替えをしない。貨物の引き取りの遅れに伴うキャンセル料は、輸入者に別途請求する」(通関業者)といった毅然とした態度が必要との意見もある。

カーゴニュース 08月29日号

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