政府/「2024年問題」対策 「物流革新緊急パッケージ」で本気の姿勢

モーダルシフトを倍増、再配達率は半減

政府は6日、物流の「2024年問題」対策を協議する関係閣僚会議を開き「物流革新緊急パッケージ」を取りまとめた。6月に公表した「物流革新に向けた政策パッケージ」の中で、とくに緊急性の高い施策を実行する。再配達率の半減に向け、「置き配」などを選んだ利用者にポイントを付与する実証事業を行うほか、鉄道・船舶へのモーダルシフトを推進し、貨物輸送量を今後10年程度で2倍に拡大する。また、年内にもトラックの「標準的な運賃」の引き上げを行う。

「即効性の高い取り組みを実行」=岸田首相

岸田文雄首相は会議で「物流は国民生活や経済を支える重要な社会インフラであり、物流の停滞が懸念される『2024年問題』が喫緊の課題だ。即効性の高い取り組みを経済対策に盛り込み、速やかに実行していく」と決意を語り、「物流の『2024問題』という変化を力に変え、物流の革新に向け政府一丸となって取り組んでほしい」と発言した。柱となる施策では、玄関前に荷物を置く「置き配」やコンビニ受け取りなど柔軟な受け取り方を選択した場合や、余裕のある配送日時を指定する利用者にポイント還元を行う実証事業を行う。ドライバーに再配達率を現在の12%から来年度には6%まで半減することを目指す。利用者に対しては、1回で荷物を受け取ることや、注文時にゆとりのある受け取り日時を設定するなど物流改善で求められる役割について政府広報やメディアを通じて明治し、消費者の行動変容を促す。

鉄道・内航の輸送量をそれぞれ2倍に

貨物鉄道と内航船(フェリー・RORO船)へのモーダルシフトを推進し、鉄道・船舶それぞれの貨物輸送量(トンキロ)と輸送分担率を今後10年程度で2倍に引き上げることを目指す。ただ、国内貨物輸送量全体の10年後の規模を正確に想定することは難しいため、倍増を計る尺度には貨物輸送量よりも輸送分担率を重視することになりそうだ。鉄道輸送量の引き上げ策の一環として「緊急パッケージ」はコンテナの大型化を推進する方策を示した。広く使われている12ftコンテナから、大型トラックと同等の積載容量を持つ31ftや、国際貨物の海陸一貫輸送に対応した40ftなどの大型コンテナの利用促進を図る。その際にはコンテナの新造や低床貨車の増強に加え、大型コンテナの取り扱い機能の拡大など貨物駅の整備と高度化に取り組むことが必要となる。物流DXの観点では、荷主・事業者の物流施設での自動化・機械化への設備投資を支援するとともに、港湾物流の手続き電子化(サイバーポート)、自動運転トラックの社会実装など物流DXを推進する。これらの施策は月末にまとめる政府経済対策に反映させ、今年度補正予算をあてる方針。ドライバーの賃金引上げの原資となる運賃・料金の底上げを図る施策を速やかに実施する。年内にも国が提示する「標準的な運賃」制度を見直し、足元の物価動向を反映し運賃水準を引き上げるとともに、荷待ち・荷役の料金を別建てで収受できるようにする。併せて、適正運賃の収受が進まない要因である多重下請構造にもメスを入れる。下請運送業者の管理簿の作成や契約時の書面化(電子含む)を義務付け、業界構造を見える化することで課題の改善を図る。

荷主対策を法制化、「Gメン」が悪質荷主に対処

荷主・元請による荷待ち指示によりドライバーの長時間待機が発生していることから、荷主・元請に対して荷待ち時間削減に取り組むよう規制的措置を導入する。大手荷主には「物流経営責任者」の選任を義務付けることとし、次期通常国会で法制化する。現在、国土交通省、経済産業省、農林水産省を中心に法案の準備作業が進んでいる。「緊急パッケージ」に基づき、国交省は「トラックGメン」を活用した監視体制を強化する。国交省と関係行政機関が連携し、違反原因行為を行っているおそれのある荷主・元請に対し、多方面から目を光らせていく。現在、トラック事業者に対し調査を行っており、これまで収集した情報や調査結果に基づき、11〜12月を「集中監視月間」として悪質な荷主・元請に対し「働きかけ」「要請」や「勧告・公表」などの措置を行っていく。

「実効性のある取り組みを」=物流連・真貝会長

「物流革新緊急パッケージ」を受け、6日に日本物流団体連合会(物流連)の真貝康一会長はコメントを発表。「物流業界が直面している課題について、国を挙げて迅速に取り組んでいただいていることに感謝申し上げる」と述べ、「持続可能な物流を継続していくには、国、荷主、消費者、物流事業者など関係者すべてを巻き込み、実効性のある取り組みをしていくことが今後さらに必要だ」と強調した。

カーゴニュース 10月12日号

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