通関連「通関業の日」記念日講演会を開催
「経済安全保障」テーマに北村滋氏が登壇
日本通関業連合会(通関連、岡藤正策会長)は12日、2023年度「通関業の日」記念日講演会を都内で開催した。当日は元国家安全保障局長で、現在は北村エコノミックセキュリティの代表を務める北村滋氏が、「経済安全保障とは何か」をテーマに講演を行った。開会にあたり、岡藤会長(阪急阪神エクスプレス)は「我々にとっての憲法≠ニ言える通関業法の制定後、50年が経過した2017年に大規模な改正が行われるにあたり、業界からも意見を出し、大いに議論した。このような大きな改正はもう二度とはないという思いから、改正通関業法の施行日である10月8日を『通関業の日』と定め、今年で6年目となる」と挨拶。「今後も通関連および各地区の通関業の活動に深い理解をお願いしたい」と述べた。講演会では、経済安全保障に深い見識を持つ北村氏が登壇し、22年5月に成立した経済安全保障推進法の取り組みを中心に講演。同法は経済活動における国家・国民の安全を守るために設けられ、制度の4本の柱として@重要物資の供給網の強化A基幹インフラの安全確保B官民による先端技術開発C特許の非公開――がある。北村氏は、5月に開催されたG7広島サミットでも経済安全保障が議題にあがったことに触れつつ、「今年は経済安全保障政策を進めるための重要な年になる」と強調した。さらに、「コロナ禍によって、マスクや消毒液といった国民の生命に関わるような医療物資の調達を、特定の国に頼るのは危険であると認識した」と有事におけるサプライチェーン確保の重要性について言及。加えて、電気通信や公共交通機関などの重要なインフラを恒常的に運営するための施策を検討する必要があると指摘した。 このほか、北村氏は「かつては石油と鉄鋼が世界で経済的な主導権を握るのに必要だったが、現代はデータセンターや海底ケーブル、5G、AI、半導体製造など、データを巡る技術の総体がそれにあたる」と説明。そのうえで、「『スモールヤード、ハイフェンス(限定された技術の厳重管理)』が経済安全保障を牽引するキーワードとなる。管理強化や規制に対する理解が重要だ」と訴えた。講演の最後には「経済安全保障を取り巻く世界の構造は変化しており、民間企業にとっても大きな課題。特に米中にマーケットを持つ企業や先端技術を持つ企業はさらに意識を高めていく必要がある」と語った。
カーゴニュース10月19日号