関税・消費税立替払い、商慣習是正へ正念場

9割が荷主からの要請、法規制に期待も

通関業者が納税義務者である輸入者に代わって関税や消費税を立替払いする、いわゆる「立替問題」――。通関業界で長年にわたり続いてきた商慣習だが、是正に向けた正念場を迎えている。立替払いについて「独占禁止法上の優越的地位の濫用の観点から問題につながるおそれがある」と指摘した公正取引委員会は、11月を「下請取引適正化推進月間」と位置づけ、指導を強化。また、政府が10月に発表した「物流革新緊急パッケージ」でも「商慣習の見直し」がひとつの柱となっており、立替問題についても見直しの議論が高まることへの期待がある。

公取委は「不当な経済上の利益の提供要請」と指摘

輸出入者の通関手続きを代理・代行する通関業者は、商慣習により、輸入者に代わって輸入品にかかる関税、消費税等を対価を得ることなく立替え払いしていること多い。東京通関業会が今年7月から8月にかけて行ったアンケートによると、「立替払いをしている」との回答は90.6%に達した。立替払いを行っている理由(複数回答)を尋ねたところ、「荷主からの立替払いの要請」が94.4%。9割の通関業者が立替払いを行っており、その9割が輸入者からの要請によるものであることがあらためてわかった。立替払いに関しては、長年、民間の取引の問題とされてきたが、近年、行政の対応に変化が見られる。財務省関税局は2021年2月、日本貿易会宛ての文書で通関業者による立替払いが「輸入者の優越的な地位を利用した不公正な取引となる場合がある」と指摘。公取委は22年5月25日、荷主と物流事業者との取引に関する調査の結果を公表した中で、立替払いについて荷主による「不当な経済上の利益の提供要請」の事例として挙げ、「問題につながるおそれがある」と指摘した。公取委の通関業者の立替問題に関する関心は強いようだ。今年6月には、昨年の事例公表以降、荷主が自ら立替払いをさせるのを取りやめたり、物流事業者が荷主に立替払いの見直しの申入れをし、立替払いを取りやめてもらった事例を報告。包括納期限延長制度の利用やリアルタイム口座振替方式の利用を開始するなど、通関業者による立替払いを不要とする措置を講じた事例について「ベスト・プラクティス」と位置づけ、荷主と物流事業者の双方により取引慣行の改善に取り組んでくことへ期待を示した。

改善の兆し、「リアルタイム方式」に新機能も

こうした官の対応を受けて、立替問題については改善の兆しも報告されている。東京通関業会のアンケートでは、昨年に比べ「立替払いが減少した」との回答は、一昨年の4%、昨年は25%だったのが、今年は46.5%にまで上昇した。全輸入申告件数に占める立替払いの割合についても、昨年の調査では「3割未満」が33%だったのに対し、今年は46%と13ptの増加となった。もちろん、立替払いについて「変わらない」との回答も「減少した」と同じ割合であったが、「減少」は増加傾向が認められた。一方、立替問題への対応では、「立替依頼をしないように申し入れ」(21.3%)は2割にとどまり、「手数料等の徴収」(11.8%)も1割だった。大阪通関業会が23年度の会員アンケートで、通関業者による関税・消費税の立替払いの負担軽減策を聞いたところ「その他」の回答が約5割を占め、「その他」の回答を分析すると、「法整備(改正)」が6割と最多となった。つまり、通関業者から立替払いを「やめたい」と荷主に申し出ることは難しく、業界からは法律によって規制してほしいとの要望が強いことがうかがえる。立替払いを規制する動きはないが、立替え払いの解消に寄与するシステム環境の整備は進みつつある。財務省関税局は、関税等を直接、輸入者等の口座から直接引き落とせる仕組みである「リアルタイム口座振替方式」で、口座振替予定額を通知する新機能を追加する方針。事前に関税等納付額がわかれば、輸入者にとっては不安が解消されるため方式が利用しやすくなり、リアルタイム口座振替方式への切り替えが進み、通関業者による立て替え払いの解消につながる期待も持たれている。

カーゴニュース 10月31日号

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