警察庁・有識者検討会 事故増加やドライバーの負担増など懸念

最高速度引き上げでトラック事業者にヒアリング

警察庁は、今月6日に開催した第2回「高速道路における車種別の最高速度の在り方に関する有識者検討会」の中で、運送事業者などに対して行ったヒアリングの内容を明らかにした。トラック事業者からは、高速道路で大型トラックの最高速度を引き上げた場合、到着時間の短縮による輸送品質の向上などのメリットがある一方、交通事故の増加やドライバーの疲労度・緊張度が増すといった懸念事項が示された。また、目的地に早く到着しても、荷待ち時間などに時間がかかる現状が変わらなければ意味がないといった意見も寄せられた。警察庁では、政府が今年6月に取りまとめた「物流革新に向けた政策パッケージ」の中で、現在、時速80kmとされている高速道路での大型トラックの最高速度を引き上げる考えが示されたことを受け、有識者検討会を設けて検討を進めている。運送事業者へのヒアリングでは、最高速度を引き上げるメリットとして、目的地までの到着時間の短縮による輸送品質と労働生産性の向上▽運行時間の短縮によるドライバーの休息時間の拡充が挙げられた。一方、懸念事項としては、追突事故やカーブ走行時の横転事故等、交通事故の増加。交通事故発生時の被害の重大化走行速度が高くなることによる燃費の悪化メーカーによる新たに車両開発が必要になった場合の車両単価の上昇や、衝突被害軽減ブレーキ等の運転支援装置を導入する場合に必要な費用負担の増加▽走行速度が高くなることによるドライバーの疲労度・緊張度の醸成が示された。このほか、「最高速度が引き上げられることによる一定の効果はあるが、『2024年問題』の根本的な解決にはならない」「目的地に早く到着しても、荷待ち時間、積荷や荷捌きに時間がかかる現状が変わらなければ意味がなく、荷待ち時間の短縮等、物流負荷の軽減が図られることが重要」「最高速度の引き上げを理由に、より遠く、より早く運ぶことを荷主から求められることによるプレッシャー等の心理的負担も大きくなり、その負担が交通事故の発生につながることを懸念している」といった意見もあった。        

最高速度の引き上げは90kmが限界?

また、大型トラックメーカーへのヒアリングでは、現在の大型トラックの設計や走行試験は速度抑制装置の上限設定速度である時速90kmを前提に行っているとして「メーカーとしては最高速度90kmまでは走行の安全性を保証することができる」の意見があった。他方、90kmよりも高い100kmについては「その速度を前提に車両を設計していないほか、その速度で走行試験を行っていない」として、実質的に90kmまでの引き上げが現実的との考えが示された。 トレーラ(被けん引車)については、80kmより高い速度での走行試験を実施しておらず、80kmよりも高い速度で走行した場合の性能は確認していないとの意見があった。

カーゴニュース 10月28日号

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