国交省 軽貨物の安全対策、規制強化へ

運行管理関連で一部義務化の方向

国土交通省は軽貨物自動車の安全対策として、現行制度を見直し、規制強化を打ち出す方針を固めた。従来の貨物軽自動車運送事業の制度では義務化していなかった項目の一部について、一般貨物自動車運送事業と同様に義務化する方向だ。来月に開催する「貨物軽自動車運送事業適正化協議会」の第3回会合で改正項目の素案を提示する。近年は軽貨物運送市場への参入者数は増加基調にあり、それに伴い、軽貨物自動車による事故件数が年々増加している。一般トラックによる交通事故件数は減少基調にあるのに対し、軽貨物自動車の事故は右肩上がりとなっており、早急に事故対策が必要な状況となっている。一般のトラック事業を開業する際は許可制であり、一定の要件を満たさなければ事業を開始できない。また、安全確保の観点から運行管理に関する多くの義務化項目が設けられている。一方、軽貨物運送の開業は届出制で、比較的容易に開業を行えるため個人事業主の参入が多く、近年のEC需要の高まりを受け、届出件数は右肩上がりで増加している。また、運行管理上の実施項目についても、一般トラックよりも義務化された項目は少ないことから、参入ハードルが低くなっているのが現状だ。具体的には、(1)運行管理者の選任(2)事故の報告(3)運行記録計を用いた記録(4)乗務の記録(5)ドライバーの適性診断の受診や初任運転者などに対する特別指導――などは義務化していない。これに対し、一般トラックではこれらの項目すべてを義務付けていることから、軽貨物に関しても何らかの項目を義務化する方向で検討が進みそうだ。軽貨物事業に課せられた義務が少ないことの背景には、車両が小さく、重大事故につながりにくいという見方があったことが推定される。なお、軽貨物と一般トラックの双方で共通して義務化されている項目は、(1)点呼(2)従業員に対する指導および監督(3)ドライバーは酒気を帯びて乗務しないこと等(4)ドライバーの勤務時間などの遵守(5)異常気象時などにおける措置(6)点検整備(7)監査の対象となること――などがある。6月2日に政府が取りまとめた「物流革新に向けた政策パッケージ」では、軽貨物運送の事故増加に伴って輸送の安全確保が急務だと指摘。「トラック運送業の働き方改革を進める中で適正な競争条件を確保する必要があることを踏まえ、軽トラック運送業における安全対策を強化する」と明記した。国交省はこの観点から、軽貨物運送の市場規模縮小につながらないかたちで安全対策を講じていく考えだ。        

カーゴニュース 11月14日号

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