「2024年問題」、はやくも顕在化か

物流業で人手不足倒産増加、予備軍も

2024年4月に働き方改革法に基づく時間外労働上限規制が適用される「2024年問題」を抱える物流業界で、早くも「人手不足倒産」が急増している。トラック運送事業では、人手不足のため受注がままならず売上が減少、燃料費などの高騰で人件費に割く余力がなく、人手不足に拍車をかけている悪循環だ。今後、厳格化される労働時間規制への対応や過剰債務、資金繰りに苦慮し、事業継続を断念する「あきらめ倒産」も増える可能性があり、「2024年問題」による“物流危機”は規制適用を前倒しで顕在化してきそうだ。

小規模事業者ほど1人退職のダメージ大きく

帝国データバンクによると、23年10月の人手不足倒産の件数は29件となり、2023年は10月時点で累計206件が発生し、年間ベースの過去最多を更新。14年以降で初めて200件を上回る高水準となった。業種別の内訳をみると、24年4月から時間外労働の上限規制が適用される物流業と建設業の合計は109件となり、この2業種だけで占める割合は52.9%で過半数となる。人手不足倒産について内訳をみると、業歴別では約4割にあたる84件が「30年以上」だった。長い業歴を有していても、人手不足が引き金で倒産するケースは多い。また、従業員数別では約75%が「10人未満」の企業だ。小規模事業者であるほど、1人の退職ダメージが大きいためで、従業員10人以下の小規模事業者が約5割を占めるトラック運送事業は、人手不足倒産の高いリスクにさらされているといえる。

7割が人手不足、従業員「増加」は2割

足元の人手不足割合は、既にコロナ禍前と同水準まで上昇し、高止まりが続いている。帝国データバンクによると、10月時点における全業種の従業員の過不足状況について、正社員が「不足」と感じている企業は52.1%で、前年同月比で1.0pt上昇した。「2024年問題」に直面する物流業(道路貨物運送業)では68.4%、建設業では69.5%と7割の企業が人手不足に陥っていた。人手不足の解消には従業員数の増加が重要な一手となるが、人手不足を感じている企業で前年同月と比較して従業員数(正社員)が「増加した」と回答した割合は物流業では20.9%と2割にとどまった。従業員数が「変わらない」および「減少した」割合は約8割にのぼる。産業間の人の奪い合いも起きつつあり、今後も従業員数の増加させることは容易ではなく、人手不足は長期化が見込まれる。帝国データバンクによると、10月の倒産件数のうち「道路貨物運送」は前年同月の21件から31件に大きく増加。1〜10月累計で251件となり、22年通年(238件)の件数を超えるなど高水準が続く。ゼロゼロ融資や助成金などによって過剰債務の状態に陥っている事業者もあり、燃料費、人件費上昇に加え、今後は利上げの動きも現実味を帯びる中、倒産予備軍は増えていると考えられる。政府は「2024年問題」への対応として10月6日に「物流革新緊急パッケージ」をまとめた。「賃上げや人材確保など、早期に具体的な成果が得られるよう可及的速やかに各種施策に着手する」としているが、民間の調査では「2024年問題」対策済み企業はわずか2割という結果もある。人手不足のスピードに各種施策がどこまで追い付くか注目される。

カーゴニュース 11月14日号

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