国交省/経産省/農水省 荷主・物流事業者への規制内容を決定

「すべての関係者が協力し物流革新」

国土交通省、経済産業省、農林水産省の3省は11日、「3省合同会議」を開催し、改正物流法の施行に向けて荷主・物流事業者に課す努力義務や、一定規模以上の荷主などに課す義務の内容を取りまとめた。今後は施行に向けた法令を整備し、来年4月にすべての荷主・物流事業者に物流改善への努力義務を課す。その1年後の26年4月には物流改善の義務を負う特定荷主と特定物流事業者を指定し、改善策を記載した中長期計画の提出と定期報告を求める。取り組みが不十分だと判断された荷主・物流事業者には、所管官庁が要請や命令を発出することになる。

荷主・物流事業者すべてに改善の努力義務

改正物流法は発着荷主、連鎖化事業者(フランチャイズチェーン本部)、トラック事業者、倉庫、港湾運送、航空運送、鉄道運送などトラック運送に関連する物流事業者に対し、物流効率化に取り組むよう努力義務を課した。取り組みの内容と進捗評価は国が提示した判断基準に基づくとした。 着荷主は、リードタイムの緩和や共同配送の実施を通じてトラックの積載効率の向上に協力するとともに、長時間の待機・荷役作業時間の解消を図る。具体的には、標準化された物流データを活用した発荷主・着荷主間や物流事業者との情報連携を促進するほか、標準仕様パレットの導入やASN情報の活用による検品レスなどに努める。また、改善の推進役となる役員クラスの「物流統括管理者(CLO)」の選任を要請する。大手荷主のほとんどと、大手・中堅の倉庫業者・トラック事業者を規制対象とし、改善を促す。連鎖化事業者は、積載率の向上や繁閑差の平準化、納入量の適正化に努め、適切なリードタイムの確保を図る。遅延した場合のペナルティの見直しを行い、指示した時刻よりも必要以上に早くドライバーが集荷・配達の場所などに到着しないよう配慮する。トラック事業者は、貨物の積み合わせや共同配送に取り組むとともに、求荷求車システムなどを利用した帰り荷の確保に努める。デジタルタコグラフを活用し、荷待ち・荷役に要した時間を把握し、荷主や倉庫業者と交渉する。取引先に対し、標準パレットの利用や運賃・料金の引き上げなどの提案を行う。 倉庫、港湾運送、航空運送、鉄道運送などの各事業者は、荷待ち・荷役時間の削減に努めることとし、トラック予約受付システムの導入やパレット導入の促進、フォークリフトや荷役作業員の適切な配置などによるドライバーの負担軽減に努める。改善推進の責任者の選任や社内教育の実施など実施体制を整備する。

荷主3200社、倉庫70社、トラック790社が対象

一定規模以上の発着荷主、連鎖化事業者、倉庫業者、トラック事業者は、それぞれ特定事業者とされ、努力義務だけでなく物流改善の中長期計画の策定と定期報告の義務が課せられる。特定荷主は、貨物量の上位3200社程度となる。また、倉庫業者は年間の貨物保管量70万t以上の事業者で、貨物保管量の上位70社程度を指定する。トラック事業者は保有車両台数150台以上の事業者で、車両数の上位790社程度を指定する。それぞれの指定により国内貨物全体の50%をカバーできるよう算定した。

鉄道・内航・航空は特定事業者に含まれない

一方、鉄道輸送、内航海運、航空輸送の事業者は、勧告・命令を含んだ特定物流事業者に課せられる義務化の対象には含まれていない。その理由は、鉄道・内航・航空はそれぞれトラック輸送からモーダルシフトする場合の転換先であり、長時間の荷待ち・荷役が発生しにくいと想定されることがある。これについて11日の会議では一部の委員から、鉄道・内航・航空などを利用した輸送でも、トラックを利用した集荷・配送の場面では荷待ちが発生することがあるという指摘がなされ、一定の懸念が示された。この考えに対し国交省の担当者は「トラック運送業における多重下請構造検討会」で長時間の荷待ち・荷役作業の解消に向け、トラック運送に関係する他の輸送モードの事業者も含めた実効性のある改善策を提示する考えを示した。。

規制措置は「相互協力を義務付けるもの」

「3省合同会議」は今回で最終会合となった。締めくくりの挨拶に立った国交省の鶴田浩久物流・自動車局長は「この会議によって国が行う規制的措置の具体的な内容を定め、義務付けているが、究極的には物流の関係者に対し『相互に協力し合うことを義務付ける』という意味だと理解していただきたい。荷主と事業者という異なる立場や異なる省庁間で、違う立場だからこそ協力し合うことが必要であり、そのための制度だと考えている」と述べ、「今回の規制の内容は、これ以上は下がらないという意味でピン止め≠オたものだ。これからは今回定めた義務付けをさらに超えて、持続可能な物流の実現に向け、一層の施策を進めていく」と決意を語った。            

カーゴニュース 11月5日号

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