国交省 備蓄米のスムーズな輸送に協力

「農水省と事業者の双方をつなぐ」

国土交通省の鶴田浩久物流・自動車局長は5月28日、専門紙記者会見を開き、政府の実施する備蓄米の緊急出荷をめぐって「物流において目詰まりが生じないよう、農林水産省と協力していく。備蓄米の流通事業は農水省が主体となって実施する事業だが、国交省としても情報共有をしっかり行いながら、積極的に協力していく」と意気込みを示した。

農水省と事業者の双方をつないでいく

会見当日、小泉進次郎農水大臣が中野洋昌国交大臣を訪問し、備蓄米の円滑な輸送に向け、倉庫からの円滑な出荷作業とトラック輸送の確保を図るよう要請した。これを受け、中野国交大臣は倉庫とトラック運送の両業界に協力を依頼していることを明かした。鶴田氏はこれを踏まえ、農水省が主体となって備蓄米の出荷・輸送を実施する際に「今後の状況の変化に対応しながら、物流の個々の局面で目詰まりが生じた場合、その情報を農水省と国交省が共有し、ピンポイントで適切に対応していく」と方針を述べ「トラックや倉庫の事業者からの意見があれば、それを受け止めて農水省に伝達し、一層円滑な物流の実現に資することもできる。物流事業者と農水省の双方をつなげることも国交省の役割になる」と語った。

物流の問題に対し「すでに後手に回っている」

鶴田氏は国交省が4月から1ヵ月間、宅配便の再配達削減PR月間を実施し、宅配業者、EC・通販事業者など170団体や利用者に向けて啓発を行ったことを報告。「対面での受け取り以外に置き配や宅配ロッカーの利用、コンビニでの受け取りなど多様な受け取り方を選択するよう啓発活動を展開した」と説明した。また、EC・通販事業者が各社それぞれのサービスを通じて、確実に荷物を受け取れる日時指定を行うことのインセンティブを設けるなど「徐々に再配達削減の取り組みが広がってきており、行政としてその動きに期待している」と述べた。 鶴田氏は「再配達だけに限った話ではないが、物流の需要と供給の関係をみると、かつては供給力が無制限にあるように考えられていた。一方、現在は深刻な担い手不足により真逆の状態にある。消費者も含め、こうした違いを意識する必要があり、関係者は繰り返して注意喚起すべきことだ。供給制約により物流が維持できなくなる可能性が目に見えるようになったのが現在の状況だ」との懸念をあらためて披露した。続けて「官民で多種多様な施策を打っているところだが、これを逆に言えば、物流の現状に対し、我々はすでに後手に回っているということでもある。山積する課題が一挙に解消することはないと認識しながらも、一歩ずつ良い方向への変化を信じて進むしかない」と展望した。 具体的には「物流改正法の定める施策を着実に推進する」と強調。同法に基づく施策を実施し、荷主と物流事業者の連携を促進し、生産性の向上と担い手の待遇改善などにつなげることが重要だとした。加えて「2030年度に想定される輸送力不足の解消や2050年カーボンニュートラルの実現、自動運転などの技術革新への対応など、国の物流政策を定める次期『総合物流施策大綱』の策定に向けた検討を始めたところだ」と述べ、新たな物流大綱に基づき、物流の持続的な成長を図ると表明した。

カーゴニュース 6月3日号

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