物流連/シンポジウム「2024年問題」をチャンスに
これからの物流≠テーマに議論
日本物流団体連合会(物流連、真貝康一会長)は1月29日、第一ホテル東京(東京都港区)でシンポジウム「これからの物流を語る〜2024年は始まりの年」を開催した。開会にあたって真貝会長は「物流の『2024年問題』を契機に、国は『物流革新に向けた政策パッケージ』などを提示して対策を加速、社会からも物流への注目が集まり、持続性・安定性が求められている。そうした動きを受け止め、物流の持続的な成長に向け、課題と取り組み状況を共有し、物流のあるべき姿を探り、必要な取り組みについて議論を行っていきたい」と挨拶した。シンポジウムは講演とパネルディスカッションの2部形式で実施した。第1部は敬愛大学教授の根本敏則氏が物流生産性の向上に焦点を当てた講演を行った後、国土交通省物流・自動車局大臣官房審議官の長井総和氏が政府の物流施策について説明した。根本氏は労働時間あたりの輸送トンキロなど物的労働生産性を25%向上できれば、ドライバーの年間労働時間を20%削減し、所得を全産業平均並み(10%増)に引き上げられる可能性を提示。「荷役・荷待ち時間の短縮や鉄道・内航モーダルシフト、貨物輸送予約の前倒し、再配達率の削減など、複数の方策を組み合わせることで物的労働生産性の25%向上は実現可能な範囲にある」とした。長井氏は「物流革新に向けた政策パッケージ」など政府の施策を説明したほか、「トラックGメン」による荷主対策の現況や、3月に改定を予定する標準的な運賃と標準運送約款について概要を報告。併せて、今国会で法制化を図る規制的措置の方向性について説明した。講演の後、根本氏と長井氏に加え、日清食品取締役サプライチェーン本部長の深井雅裕氏と物流連の真貝会長がパネリストとなりディスカッションを行った。深井氏は食品を扱う企業として安定的なサプライチェーンを維持するとともに、環境・社会課題への取り組みが重要だとした上で、日清食品が進める物流改革について説明。最優先で取り組む事項として、(1)サプライチェーンの可視化(2)業種業界を超えた情報共有の促進(3)物流人材の育成と物流業界の魅力向上――の3点を提示。サプライチェーンの可視化では、業務プロセスを標準化し、企業間連携を促すとともに、従来は商慣行とされていた荷役や附帯作業を商取引の一環と捉え、効率化の動機付けとすべきと提案。業種業界を超えた情報共有の促進では、物流事業者が持つ情報がサプライチェーンの効率化に有益だとしたうえで、物流波動の平準化や積載率の向上を実現するには事業者の持つ情報を起点とすべきと強調した。物流人材の育成と物流業界の魅力向上については、物流DXなどデジタル化技術を活用することで業務を変革し、働き方改革と効率化を促進することと、ロジスティクス分野の専門スキルの習得や学び直しを通じ、変革を担う人材の確保・育成が必要だと指摘した。併せて、サッポロビールとの異業種間連携による物流効率化の事例を紹介。また、同社グループ内でも調達物流と製品物流の連携を促進することで、サプライチェーンの統合に取り組んでいることを報告した。
「困難な課題だからこそ、伸びしろしかない」
これを受け、真貝会長は「物流の変革期のいまこそチャンスだと認識し、生産性の高い物流を実現する施策を実施していくことが必要だ」と強調。長井氏は「物流革新は官民一致して推進することが重要。事業者が主体的に活動する環境を整備していく」と述べた。深井氏は「『2024年問題』は物流にとって困難な課題だからこそ、チャンスであり、伸びしろしかないと言える。荷主と物流事業者が連携することで、楽しく物流の未来をつくりあげていきたい」と意欲を語った。最後に根本氏が「『2024年問題』への対応が急務であるからこそ多くの荷主にも物流に対する危機感を共有していただいている。行政も物流革新に向けて様々な施策を打っている。2024年は関係者全体が物流改善への取り組みを始める年だ」と締めくくった。
カーゴニュース 2月1日号