矢野経済研究所 30年のトラック輸送需給ギャップを予測
21ヵ月のうち約11.5日分の荷物運べず
矢野経済研究所はこのほど、2030年の国内貨物輸送量等についての予測を発表した。30年度の営業用貨物自動車の貨物輸送に関する需給ギャップは年間で7億4600万t、1ヵ月あたりで6200万tとなり、効果的な対策が行われなかった場合、21ヵ月のうち約11.5日分の荷物が運べないと予測した。需要量の予測は、営業用貨物自動車輸送量の10〜19年度推移の変化率に、将来人口やGDP(国内総生産)の予測を加味して貨物輸送量を予測。30年度の営業用貨物自動車による国内貨物輸送量予測を27億1900万tと推計した。営業用貨物自動車による国内貨物輸送量は減少傾向にあり、30年度の貨物輸送量予測値は22年度比で106.3%、コロナ禍の影響を受けていない19年度比で95.7%の見通しとなっている。一方、供給可能量の予測では、30年度のトラックドライバー人口と労働時間を算出した。トラックドライバー人口は、総務省統計局「国勢調査」の道路貨物運送業の自動車運転従事者数を基に推計し、30年のトラックドライバー人口を59万人と予測。30年のトラックドライバー人口予測は20年比で75.7%、2000年比では60.6%まで減少すると見込んだ。トラックドライバーの労働時間は、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」の道路貨物運送業の労働時間数を基に推計し、30年度のトラックドライバーの労働時間を2447時間と予測した。30年度まで効果的な対策が行われなかったと仮定し、22年度のドライバー1人当たり・1時間当たりの貨物輸送量に、30年度のトラックドライバー人口、労働時間の予測値をかけあわせると、30年度の供給可能量は19億7300万tとなる。これにより30年度の需要量と供給可能量の差分は7億4600万tとなる。なお、30年度の営業用貨物自動車の貨物輸送に関する需給ギャップを解決するための主な施策として、(1)トラック積載効率の向上、(2)モーダルシフト(船舶、鉄道)の進展、(3)荷待ち・荷役時間の削減が考えられる。そのうち、トラック積載効率の向上については、国土交通省「総合物流施策大綱(21年度〜25年度)」では、トラックの積載効率の施策の進捗状況(KPI)として37.7%(19年度)から50%(25年度)へ引き上げる目標が記載されている。ただ、自動車輸送統計調査年報によると、22年度の営業用貨物自動車の積載効率は40.12%にとどまっている。矢野経済研究所では、「積載効率50%という数字は非常に高い目標設定であり、達成するには力強い推進力が必要であると考える。現実的な達成可能ラインを考慮すると、実車率や実働率の向上といった輸送効率の向上策のほか、モーダルシフトや荷待ち・荷役時間の削減など、別の施策も併せて取り組むことが求められると考える。なお、問題の根本的な解決には、それらの取り組みと並行して、トラックドライバーの待遇(賃金と労働環境)の改善が不可欠」としている。
カーゴニュース 5月23日号