国交省/厚労省 荷待ち・荷役時間の短縮で成果なし

2時間以内へ「鉢巻を締め直す」

国土交通省と厚生労働省は12月25日、第17回「トラック輸送における取引環境・労働時間改善中央協議会」(トラック中央協議会、座長=野尻俊明・流通経済大学名誉教授)を全日本トラック総合会館で開催した。今回は、国交省、厚労省、公正取引委員会、中小企業庁、全日本トラック協会がそれぞれの取り組みを報告。国交省が発表したトラック事業者への調査によると、2024年度のドライバーの拘束時間は20年度と比べ減少していたが、荷待ち・荷役作業時間はほとんど変わらず、改善の成果がみられなかった。この結果を踏まえて会議の出席者は危機感を共有し、関係者全体で物流改善に取り組む必要性を確認した。

荷待ち・荷役時間は4年前と変わらず

国交省は24年9〜11月にトラック事業者を対象に実施した調査について報告。1運行当たりの平均拘束時間に関する調査結果について、20年度に実施した同様の調査と比較した。それによると、ドライバーの1運行当たりの平均拘束時間は11時間46分となり、20年度調査時の12時間26分から40分減少していた。主な要因は運転時間が約50分減少していたことによる。一方、荷待ち時間は20年度の1時間34分に対し24年度は1時間28分、荷役時間は20年度の1時間29分に対し24年度は1時間34分となり、荷待ちと荷役の合計時間を比較すると20年度は3時間3分、24年度は3時間2分と減少がみられず、政府が「物流革新に向けた政策パッケージ」に掲げた荷待ち・荷役作業時間を2時間以内とする目標値(2時間以内ルール)に達しなかった。出席した委員からは「改正物流法の施行により今後の改善が期待できるが、真剣に取り組まなければ現状の3時間を2時間に短縮できないことが明確になった」「関係者全員が鉢巻を締め直し、時短を進めるべき」などの声があった。今後は行政が荷主・元請などに「2時間以内ルール」の周知を広げるとともに、荷主・事業者が連携を強化し、時短に取り組む必要性を確認した。続いて厚労省が24年4月に施行された改善基準告示などドライバーの労働時間規制に基づく取り組みについて説明。労働基準監督署による荷主を対象とした荷待ち時間の短縮や改善基準告示の周知などの働きかけについて、昨年11月時点で荷主への要請が1万8256件となったことを明かした。

下請法改正で「発荷主対策」を明記

公正取引委員会は下請法の改正に向けた現在の検討状況について報告した。25年通常国会への改正法案の提出を目指しており、とくに発荷主から元請運送事業者への委託について「現状では下請法の対象外となっており、独占禁止法の物流特殊指定で対応しているが、今後の法改正により、発荷主が運送事業者に対して物品の運送を委託する取引を、新たに下請法の対象にする方向だ」とした。また、中小企業庁は中小企業の価格転嫁を促進する取り組みを説明。全国330人の取引調査員(下請Gメン)が年間約1万件のヒアリングを行い、3月・9月の「価格交渉促進月間」で個別企業への指導・助言を行う活動を継続し、価格転嫁の促進を強化していく考え。全日本トラック協会は、改正物流法の内容に関する周知を促進する今後の取り組みとして、国交省と連名でリーフレットなどを作成する。また、ブロック単位で説明会や、都道府県トラック協会と共催で会員向け説明会を開催するとした。トラック中央協議会は、トラック事業者、労組、行政、学識経験者など関係者が集まり、取引環境の改善と長時間労働の抑制を図ることを目的としたもの。前回は23年3月に開催し、今回は1年9ヵ月ぶりに開催した。

カーゴニュース 1月9日号

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