国交省25年度予算物流革新≠ヨ550億円、大型予算で施策を推進
「新モーダルシフト」の加速に32億円計上
物流部門では25年度当初予算が前年度を31億円上回る163億円(1.2倍)となった。これに24年度補正予算387億円を合わせた550億円を活用し、物流の革新≠ニ持続的な成長に向け、多様な施策を推進する。具体的には「2030年度に向けた政府の中長期計画」に基づき「物流の効率化」「商慣行の見直し」「荷主・消費者の行動変容」を3本柱に掲げて施策を推進する。物流効率化に向けた施策には合計544億6300万円(1.2倍)を計上した。内訳をみると、鉄道・内航海運に加え、航空輸送やダブル連結トラックなど多様な輸送モードを活用した「新モーダルシフト」を推進するため32億2100万円を充て、地域の産業振興政策とも連携しながら、鉄道輸送の拡大に向けた31ftコンテナなど大型コンテナの普及促進や海上コンテナシャーシの導入支援に注力する。併せて、航空機の空きスペースを活用した輸送やダブル連結トラックの導入を支援する。物流GX施策には12億円を計上。水素や再生可能エネルギーなどを活用するための充填・充電設備の導入を支援する。物流DX施策では、自動運転トラックを活用した幹線輸送サービスの実用化やドローンを利用したラストワンマイル配送の効率化促進のため10億500万円を計上した。さらに、物流データの標準形式に基づくデータ連携の推進や国が標準仕様と定めたT11型パレットの導入促進などに4億円、中小事業者を対象とした予約受付システムや動態管理システム、求荷求車システムなどの導入や、テールゲートリフターやトラック搭載クレーンの導入補助に15億2100万円、物流施設での非常用電源設備の導入支援や災害時の物資輸送訓練を支援するため2億6000万円を計上した。加えて、28億5600万円の予算で輸送の安全確保の観点からデジタル式運行記録計や遠隔点呼機器の導入支援を行う。
改正物流法の執行体制を整備、Gメンの活動強化も
商慣行の見直しを促進する施策には2億8200万円(1.2倍)を計上した。4月の改正物流法の施行に向け、荷待ち・荷役時間の削減や積載率のための荷主と物流事業者に対する規制的措置の執行体制の整備や広報を強化する。併せて、物流業界の多重下請構造の是正や標準的運賃の普及・浸透に向けた実態調査を行うとともに「トラック・物流Gメン」が是正指導を強化するために必要な違反原因行為に関する調査や情報収集を実施する。荷主・消費者の行動変容に向けた取り組みには1億9300万円(0.1倍)を充てる。宅配ロッカーなどを用いた多様な受け取り方や余裕のある配送日時指定を消費者が積極的に選択する仕組みを構築するための実証事業を支援する。また、6700万円の予算を用いて政府計画による施策の推進状況をモニタリングする。そのほか、物流拠点やDX・GX関連設備の整備を促進するため、鉄道建設・運輸施設整備支援機構を通じた財政投融資として、当初予算と24年度補正予算を合わせた440億円を計上した。
貨物駅の機能強化や脆弱箇所の防災対策を推進
政府の「物流革新緊急パッケージ」は今後10年程度で貨物鉄道の輸送量と輸送分担率を倍増することを目標に掲げている。これに関連する鉄道部門の予算をみると、貨物駅・鉄道ネットワークの災害対応などを含む機能強化を図るため、当初予算と補正予算を合わせ、幹線鉄道等活性化事業費として3億300万円の内数、鉄道施設総合安全対策事業費として182億3500万円の内数を計上した。また、物流部門と連携し、モーダルシフト関連予算15億円の内数を活用するほか、幹線鉄道等活性化事業費3億300万円の内数と鉄道整備等基礎調査委託費189億円の内数を計上。輸送需要が高まることが見込まれる貨物駅で大型の31ftコンテナなどを取り扱えるようコンテナホームを拡幅するほか、大型コンテナの導入促進や大型コンテナに対応した荷役機器の導入補助を図る。また、新幹線による貨物輸送拡大に向けた実証輸送を行う。
貨物駅の機能強化や脆弱箇所の防災対策を推進
港湾関係の予算では、「集貨」「創貨」「競争力強化」を柱とする国際コンテナ戦略港湾(京浜港、阪神港)の機能強化策として、コンテナターミナルの整備や一体利用の促進、AIターミナルの機能強化などに取り組む。モーダルシフト関連は115億円を充て、内航フェリーやRORO船による輸送力の拡大や輸送ネットワークの構築を支える港湾整備を推進する。 物流関連の税制改正では、中小事業者がトラックや内航船、機械装置を取得した場合に特別償却または税制控除の選択適用を認める特例措置が延長された。27年3月末までの期間、取得価額(内航船は取得価額のうちの75%)の30%の特別償却または7%の税額控除の選択が可能となる。 他省庁との連携事業予算も前年度を引き継ぐ形でまとまった。資源エネルギー庁と連携した事業では、62億円の内数の予算を充て、デジタル技術を活用した輸送の効率化やEVトラック、予約受付システム、車両動態管理システムなどの導入を支援する。環境省との連携事業では70億円の内数の予算により冷凍冷蔵倉庫などでの脱炭素型自然冷媒機器の導入支援やCO2排出削減の効果検証事業への補助を行う。また、48億円の内数の予算により物流拠点に自動化機器・システムと再生可能エネルギー設備を同時に導入し、CO2排出削減と省人化に取り組む事業を補助する。
カーゴニュース1月9日号